今回は、学習の積み重ねの大切さについて書きたいと思います。
私は保護会などで「学習の積み重ねの大切さ」について説明をする時、「お城の石垣」を例えにします。
小中学校での学びは、「基礎基本」であり「建物の土台のようなもの」です。
姫路城などの日本のお城をイメージするとよく分かります。
石垣は、小学校などでの基礎基本の学びを意味します。
建物は、職業選択などを意味します。
どんな石垣を作るかによって、上に建てる建物も変わってきます。
小さな石垣には、小さな建物しか建てることができません。
高さにも制限が出てきます。
これを子どもの暮らしに当てはめてみると、職業選択などに制限が出てくるということになります。
大きな石垣には、大きな建物を建てることができます。
工夫次第で、様々な建物を建てることが可能になります。
子どもの暮らしでは、職業選択などに多くの可能性があることを意味します。
その後の生活の質に大きな影響を与えることになります。
小学校では、一段一段石を積んでいきます。
石の一つを一つの単元だとイメージします。
一段目である一年生の時は、ひらがなの学習、足し算、引き算などの石を地面の上に置きます。
二段目である二年生の時は、九九などが置かれます。
年々、石が積み上がっていきます。
その際、しっかりと石を積んでいく必要があります。
石垣なので、置いた石の上にはまた石を置きます。
しっかりと安定させて置かないと、上に置く石が安定しません。
学習にあてはめると、九九の学習がしっかりとできていないと、その上にくるであろう「かけ算の筆算」がきちんとできません。
また、その時の学習の不十分さ(石の不安定さ)は、その時ではなく、後で大きな影響が出てきます。
九九の学習が十分でなくとも、その時は、それ程大きな影響はありません。
大きな影響が出てくるのは、次の石を置く(かけ算の筆算など)時です。
さらにその上に次の石を置こうとすると、もっと大きな影響が出てきます。
状況によっては、石を置くことができないようなことにもなります。
これを算数に当てはめてみると、2年生の九九の学習の不十分さがきっかけとなり、3年生でかけ算の筆算などができず意欲を失い、4年生、5年生では、全く授業について行かれずに、算数を投げ出してしまうようなことになります。
中学校3年生まで、算数(数学)はありますので、その子どもにとって苦痛な日々が続くことになります。
不登校などのきっかけとなる可能性もあります。
そのことがその子どもが高校に行こうとした際にもネックになってしまうこともあります。
ところで、先ほど、一つの単元を一つの石だと書きました。
1年生では、ひらがな、カタカナ、足し算、引き算という石を積みます。
その後、2年生では、九九と続いていきます。
その一つ一つの石ですが、実は大きさに様々な違いがあります。
それはその単元の重要度に関係しています。
何度も例に出している「九九」は、石が非常に大きいです。
その後の学習に大きな影響を与える内容です。
九九の学習が十分でないと、その上に乗ってくる様々なものが不安定になってしまいます。
将来、出来上がった石垣の上に建物を建てていきます。
大きさも大切ですが、しっかりとした作りであることも大切になります。
学びが十分でない個所があり、一部不安定な所があっては、上に立つ建物が不安定になります。
また、建物が建ったとしても、台風や地震などの自然災害が起こった際、しっかりと耐えていかなければいけません。
人生においても、台風や地震のような大きな試練が時に起こります。
しっかりとした土台があれば、乗り切れる可能性が高くなります。
私は今年度、6年生を担任しています。
この段階までくると、抜けている石を補修するのは非常に困難を極めます。
6年生としての学習内容が出てくることと並行して苦手な部分のフォローをしていかなければいけないからです。
その時、その時にきちんと学びを積み重ねていくことがとても大事になります。
私は積極的にこういったことを保護者に伝えるようにしています。
保護者に学習の積み重ねの大切さを伝えたいと思っているからです。
親や教師が、特に小学校の低学年の時期にこういったことを意識することができるとその後の子どもの成長に違いが出てきます。
大きくなってから苦しい思いをする子どもが少しでも減ることを願っています。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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