2014.01.08
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学力上位層の子どもの可能性を伸ばすためにできること

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

新年、明けましておめでとうございます。

今年度もよろしくお願いします。

 

さて、今回は、子どもの可能性を伸ばすことについて書きたいと思います。

特に知的レベルが高く、教科書の内容などでは満足できないような子どもの可能性を伸ばすことについてです。

 

学校での教育の目的の中の一つに学習における底辺層の底上げがあります。

九九を完璧に覚えていない子どもに一対一で繰り返し何度も暗唱させる。

漢字テストで合格しない子どもを休み時間に残して再テストを受けさせる。

作文で「を」と書くところを「お」と書いてしまう子どもの文に赤で訂正を入れる。

 

教師の立場からは、テストで100点を取った子どもよりも30点を取った子どものことがとても気になります。

そして、その場に応じた方法で関わりを持ちます。

そのままでは、学習指導要領などで求めている最低のレベルを満たしていないことになるからです。

 

そういった状況で、私を含めた教師がつい忘れがちになるので100点を取った子どもへの関わりです。

小学校では、基礎基本の習得が非常に大事なことであり、そちらへ教師の意識が向くからだと思います。

100点を取った子ども達は、100点を取ったことについては満足しているかもしれませんが、そのことで知的好奇心が満たされているとは限りません。

その子にとって簡単な問題に取り組み、良い点を取ったとしても人はあまり満足感を得られないからです。

 

そこで私はできるだけそういった子ども達の知的好奇心を刺激できるようなことをやりたいと思っています。

15年程前、学校に余裕がある頃には、クラスのみんなで「チャレンジ」という取り組みをしたことがあります。

これは、様々な機関(行政、会社など)が募集しているものを子ども達に示し、自分の得意な分野でチャレンジしていくというものです。

作文、キャラクターデザイン、標語、アイデア料理、写真など、色々なジャンルのものを示しました。

本格的に取り組んだ年には、何十個もの入選があり、クラスへの特別賞が贈られたものもあったほどです。

それぞれの子どもが自分の得意分野でどんどん能力を発揮した成果でした。

 

しかし、現在は学校の状況が少し変わり、時間的な余裕がなくなりつつあります。

それなので、今書いた「チャレンジ」のような取り組みはやりにくいです。

今回、私が「チャレンジ」のように子どもに刺激を与えるために行ったことは、「高校、大学の学習を体験させる」ということです。

15年前と比べ、現在はネットワークが発達しています。

多くの子どもが家でインターネットを使って、多くの情報に触れることができます。

そこで、知的レベルが高く、教科書の内容などでは満足できないような子どもに、ネットワーク上にある有用な情報を伝えました。

 

具体的には次のようなものです。

 NHK 高校講座

 放送大学

 Ted

 edX

 

私は、今年度6年生の担任なので、6年生の賢い子どもに知的刺激を与えるには、上の書いたようなものが必要になります。

これらは簡単な手続きで、どれも無料で見ることができます。

小学校6年生にとって高校講座は勿論難しいのですが、自分が好きな分野に関してはちょっと難しいくらいのレベルになります。

6年生で歴史好きな子どもにとっては、6年生向けの歴史番組では、知っていることばかりであまり面白いと感じられないことが多いようです。

高校生向けの歴史番組ですと、知らないこともたくさんあり、良いようです。

 

放送大学に関しては、地上波やCS、ラジオなどで毎日放映されています。

これも子どもが好きな分野に関して見てみると大きな刺激になります。

勿論、正規の大学の授業なので、小学校6年生が理解するには無理がある部分もありますが、学びへのモチベーションを上げることにはつながります。

その上、16歳になれば、科目履修生として、大学の授業を正式に履修することもできます。

 

Tedは最近NHKで放映されているものです。

NHK以外でも、様々な形で見ることができます。

非常に高い質のプレゼンを見ることができます。

様々な分野の専門家が多岐に渡るテーマについて語っています。

 

最後のedXは、アメリカの有名大学などがネットワーク上に無料のコースを開設しているものです。

ハーバード大学やMITなどがコースを設けています。

日本にいながらハーバードの授業を受け、単位を得ることもできます。

優秀な成績を修めれば、大学に正式に入学するという道も開けています。

 

こういったものをそういった刺激を求めている子どもに示してあげることも、教師にとっては大事な仕事なのではないかと思っています。

勿論、これは親がその役割を担っても良いと思います。

日本の社会において、「出る杭は打たれる」ではありませんが、あまり突出することが望まれません。

以前の文章でも書きましたが、留学する学生も以前より随分減ってきています。

今、政府がその数を増やすべく様々な施策を練っています。

以前訪れたアメリカのボストンのハーバード大学では、目をぎらぎらとさせた中国の人がたくさんいました。

日本人は、学生、観光客のどちらもほとんど見当たりませんでした。

 

私は、さらに高いレベルにチャレンジしていくような子どもを育てたいと思っています。

どんどん「出る杭」になって欲しいと思っています。

そういった子どもは、社会を変えていく可能性を秘めているからです。

 

教育は、すぐに結果が見えません。

短期で結果が見えるものを重視しがちになります。

教師や親の仕事は、その子どもが人生の全てに影響を与えます。

小学校の担任が行ったことが、その子どもが80歳になった時に役立つかもしれません。

私は、教師や親の仕事は「種まき」のようなものだと思っています。

種を蒔かないと芽は出ません。

しかし、種を蒔いても、芽が出ない時もあります。

だからといって、種を蒔かなければ、芽は出ません。

可能性を信じて、種を蒔くのです。

その子どもの人生が、そして、世の中がより良いものになることを願って・・・。

 

この一年が皆様にとって良い年となりますようお祈りしております。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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