初雪体験しました
肌寒い日が増えてきましたね。11月14日、15日と秋田市で行われた「第59回全国肢体不自由教育研究協議会」へ参加してきました。
秋田空港へ着陸する際に、空港の芝生が一面真っ白になっており、初雪に触れてきました。気温1度という寒さに、北の地に来た実感が得られました。そして、気温は寒くても、秋田の方々の非常に心が温まる「おもてなし」を随所に感じる研究大会でした。
今回はその研究大会で、非常に感慨深いお話を伺って参りましたので、そのお話を紹介させていただきたいと思います。
命をつなぐ「アタッチメント」
初日の大会記念講演で、秋田市大森山動物園の小松守園長による「動物のいのち見つめて」というお話を伺いました。
私は知らなかったのですが、足を痛めた子キリンが義足を作ってもらい、すくすく成長したお話で有名な動物園だそうです。
大森山動物園は秋田のとても豊かな自然に囲まれており、自然と動物を通して、もう一度来場された人たちが「命のつながり」についてふと感じるようにすることを大切にされているそうです。
動物園の歴史の中で様々な命に関するお話を伺い、その中で「ノドジロオマキザル」のお話をまずお伝えしたいと思います。
ノドジロオマキザルの三平は1匹だけでこの動物へ赤ちゃんの時にやってきて、それからずっと一人(1匹)で暮らしていたそうです。そんなところに、園長の小松さんが、ひよこを三平に渡したそうです。
ノドジロオマキザルはひよこなど小動物を食べてしまうこともあるそうですが、三平はすっとひよこを優しく手にとり、やさしく抱きしめたそうです。
そうです、ずっと一人で寂しくて、愛着を求めていたのです。
それから三平とひよこはずっと一緒のおりの中で暮らし、なんと三平が母代わりになりニワトリになるまで育てたそうです。会場のスライドでは、三平が自分と変わらぬ大きさのニワトリを優しく後ろから抱きしめている映像が紹介されました。
そして、のちに三平はノドジロオマキザルどうしで結婚し、なんと日本一の数のノドジロオマキザルのファミリーになったそうです。ニワトリで得た愛着を今度はわが子の子育てに生かし、その子供がさらに上手な子育てをしていったそうです。
小松園長は発生学からも、「触れあうこと」は副交感神経が程よい刺激を受け、「やすらぎ」につながると語っていました。肌と肌で感じる心があり、それが「相手を思う心=同情、いたわり」になること、「愛されている実感=安心感、存在感」に人間だけでなく動物にもなっていることをお話されていました。
そしてもう1つは、悲しい事例をご紹介くださいました。それは、マンヒヒのしのぶちゃんのお話です。
しのぶちゃんは小さく生まれ、すぐに母親が育児放棄をしてしまい、人口保育器で育ちました。ミルクは飼育員さんがあげて育てたそうです。
飼育員さんも一生懸命大きくなるように、ミルクを日に何度も飲ませたそうです。でもしのぶちゃんは何年も生きられずに死んでしまったそうです。
後で分かったことだそうですが、しのぶちゃんにミルクをあげる映像を見て見ると、普通とは違う泣き方をしていたそうです。
それは、「抱いてて欲しい、もっと愛して欲しい」という悲痛の意味の鳴き声だったそうです。飼育員さんもその時は泣いている意味まで気がつかなかった、もっと抱きしめてあげればよかったと悲しみに包まれたそうです。
このしのぶちゃんの事例から、「子供は、体の栄養だけでは育たない。」「心の栄養も必要」なのだということをマンヒヒのしのぶちゃんが教えてくれたと園長はおっしゃっていました。
命をつなぐには、包み込んでくれる「懐(ふところ)」が必要です。動物たちもつながりの中、支え合って生きている。
はじまりは「親と子のつながり」から、そして周りへ・・・
と、小松園長のお話があり、最後にヘレンケラーの家庭教師をしていたアン・サリバンの言葉をお話されて講演は終わりました。
「Children …require
guidance and sympathy far more than instruction.」
いろいろな解釈があるようですが、子どもは親に愛を通して導いてもらうということだとおっしゃっていました。
小松園長のお話より、言葉だけではなく、肌と肌を通した愛情の大切さを大森山動物園の動物からたくさん教わりました。
この愛の形が子育てにおいて、大切にしていってもらえるようになればと思います。
そして、つれづれ日誌でも書いてきましたが、触覚防衛があることでまずこの愛着形成が阻害されてしまいます。幼児教育だけでなく、周りの大人が正しい理解を子供たちにしてあげることの大切さを改めて感じます。
今年も残り一ヶ月あまりとなりました。寒さに負けずがんばりたいと思います。
植竹 安彦(うえたけ やすひこ)
東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士
肢体不自由教育からの視点を中心に、子どもたちの発達を支えるために日々できることを一緒に考えていきたいと思います。
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