先日、文科省が2020年を目途に、小学校3,4年生は、週に1~2時間、5,6年生は、週に3時間の英語の授業を行っていくということを発表していました。
私が勤めている学校のある埼玉県深谷市は英語教育に力を入れています。
文科省の指定のもと、市内の全小学校で3年生から週に一時間、外国語活動に取り組んでいます。
今回は、先日取り組んだ研究授業を中心に英語の授業について、書きたいと思います。
一般的に小学校の5、6年生で、2011年から週に1時間外国語活動に取り組んでいます。
取り組みの中で、中学校や高校とは違った様々な課題が指摘されています。
「英語が話せない学級担任が教えることに無理がある」「外国人の先生と打ち合わせをする時間が確保できない」「英語の文字は書かせないので、ゲームや歌ばかりで飽きてしまう」などなど。
そういった中でも、学年が上がるに従って、子どもがあまり熱心に取り組まなくなってしまうという難しい問題があります。
特に6年生になると、「みんなで一緒に元気に歌を歌いましょう!」「英語のゲームに取り組もう!」と言っても、少し引いた感じで、あまり積極的に動かない子どもが出てきます。
取り組む内容が幼いと感じていたり、はっきりとしない発音のものを言いたくないという心情からそういう行動になるのだと思います。
Color の単元で、「What color?」「Red!」では、子どもも飽きてしまいます。
そこでポイントになるのが、「子どもの知的好奇心を満足させること」「自分に関わりのあることに取り組むこと」です。
先日の英語の研究授業では、「Where do you want to go?」という内容に取り組みました。
全5時間のうちの2時間目の内容でした。
ALT(Assistant Language Teacher) やHRT(Home Room Teacher) のやり取りから、大まかに会話を理解するということがねらいの授業です。
授業で使っているHi, friends! 2 というテキストでは、次のような例が出ています。
中国:万里の長城を見る、パンダを見る、餃子を食べる
オーストラリア:エアーズロックを見る、コアラを見る、クリケットを見る
今回、私が行った授業では、例の中に「ツバル」という国を入れました。
ツバルは、南太平洋にある島国で、地球温暖化の海面上昇により、国土が無くなってしまうかもしれないという国です。
数日前に、理科の授業において、このツバルを話題にしました。
そういったこともあり、私は、次のような文を例に入れました。
「I want to go to Tubaru. I want to check global warming.」
「global warming」は、「地球温暖化」のことだそうです。
小学校6年生の子どもにとって、アメリカでステーキを食べたい、イタリアでピザを食べたい、中国でパンダを見たい・・・というのでは、少しリアリティに欠けるような印象を受けます。
それぞれの子どもが、現在、問題意識を持っていることを実現するために外国に行ってみたいというようにしたいと思っています。
環境問題に関心がある子どもは、私のようにツバルに行ってみたいと思うかもしれません。
そういった子どもの思いを代弁したのが、ツバルの例です。
「スペインにプロサッカー選手になるための修業をしに行きたい」というようなことも良いと思います。
単にスペインでサッカーを見たいというものとは、違いがあります。
先日、実際に小学生で、スペインのバルセロナやレアルマドリードと契約をしたというニュースが流れていました。
ところで、4時間目の授業では、それぞれの子どもが、「どこに行って、何をしたいのか」を考えました。
前にも書いたようにできるだけリアリティを出したいので、「本当に自分がなりたいこと、したいことは何なのか」を考えることに時間をかけました。
そのために、写真を見せながら、出した例は次のようなものです。
○パティシエになりたいので、チョコを食べにベルギーに行きたい
○建築家になりたいので、ドイツの古城を見に行きたい
○動物を世話する仕事に就きたいので、オーストラリアでコアラに接したい
○昆虫の研究者になりたいので、インドネシアに行って、虫を捕りたい。
こういった例をもとに子ども達は、自分の将来や夢などを考えながら、色々なことを考え出していました。
実際に子供が考えたのは、次のようなものです。
○Astronaut(宇宙飛行士)になりたいので、アメリカに行きたい。
○ファッションデザイナーになりたいので、ショーを見にニューヨークとパリに行きたい。
○植木職人になりたいので、ブラジルに行って、アマゾンの木を見てみたい。
今回の授業のように、子どもが自らの思いをもって取り組めるような活動が大切なのだと思います。
あまり意味もなく中学高校大学と約10年間も英語の勉強をしても、話せるようにはなりません。
時間もエネルギーもお金も無駄だと言えます。
子どもが「話したい」「伝えたい」「使いたい」と思えるような状況を作り、学んでいくことが大事なのだと思います。
小学校での英語の時間が増えていくにあたって、これから内容などが決められていきます。
他の授業の時間を削って英語に取り組むことになります。
意味のある英語の活動になるよう議論が進むことを願います。
研究授業で使った資料などがアップしてある私のHPがあります。
英語関係以外にもいろいろな資料があります。
興味のある方はご覧ください。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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