2013.10.21
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石川県社会科教育研究会鳳珠郡大会を終えて

石川県金沢市立三谷小学校 教諭 泊 和寿

    

 

鳳珠郡大会、台風24号が最接近する

 

「石川県社会科教育研究大会」

毎年、石川県の小学校・中学校・高等学校の社会科を研究する教員が自主的に共同で開催している大会である。

本年は、鳳珠郡にて行われた。

会場は、

能登町立柳田小学校

能登町立宇出津小学校

能登町立柳田中学校

石川県立能登高校

校種の異なる6クラスによる社会科の授業が公開された。

近年、小中連携が叫ばれる。

他校種の児童生徒の学習の様子を知ること。

中1ギャップをどう乗り越えるかということ。

他校種から、授業改善のヒントを得て、日々の授業に生かすこと。

自主的に行われる、値打ちのある学び合い。

石川県社会科教育研究会は、随分前からこれを行っている。

 

まずは、我々教師が学んでいこう! と。

 

1.   台風24号 最接近!

 

参加者は多くを望めないのではないかと心配されていた。

なぜなら、

(1)  現地の人や学校が少ない。( 21792人(石川県内の人口の1.86%)〔人口統計局調べ〕)
(2)  位置的に参加が難しい。(鳳珠郡は能登半島の北部、奥能登と呼ばれる位置にある。電車はなく交通手段は車のみ、参加に時間がかかる)
(3)  台風24号が最接近している。(朝、暴風圏はなくなったものの最大風速15m、休校や授業打ち切りになることも考えられた)大会自体が中止も…。
(4)  近年、なかなか他の学校の研究発表会に出にくいという、学校現場の諸状況もある。
(5)  大会の事前申し込みは、数名であり、台風等のためにキャンセルもあった。

 

私は、対応のために前日に現地入りし、現地の大会長と連絡をとりつつ、台風の状況を見守っていた。

 

 

2.大会への布石

 

大会は、絶対に成功させたい。

 

夏休みには、県内各地から、指導案検討会に集まった。

遠い人は、車で3時間をかけて柳田小学校までやってきてくれた。

暑い中であったが、小・中・高の授業者が指導案を用意し、校種を越えて、知恵を出し合った。

 

会場校では、当日の指導案をもとに、別のクラスを使ってプレ授業を行っていた。

2回も、である。

ここまでの熱意と準備は、とても尊いことであると思う。

もちろん、授業者の勉強になる。

共同で研究した先生方の勉強になる。

渾身の授業なので、子供達のためになる。

地域のためになる。

未来のためになる。

 

大会運営のために運営委員や幹事会の皆さんが準備してくださっている。

 

いくつもの関係諸機関や団体さんから、後援をいただいている。

 

記念講演のために、講師も御招きしている。

 

情熱を注いだ仕事は、後世に必ず良い影響を与える。

 

鳳珠郡の皆さんが頑張っている。

「やってよかった!」

と、言ってもらえる大会にしたい。

 

しかし、台風が、来る。

成功への思いはなおさら強くなっていた。

成功ではなく、大成功にするぞ!

 

大きな歴史の歩みが刻まれる時、
歩みへの障害もまた大きいものである。

 

私は、厳しい状況を鑑みて、

「成功」を80人以上の参加。

「大成功」を100人以上の参加。

と、決めた。

打てる手は、打った。
あとは、天命を信じて待つのみ。
当日の業務に全魂を注ぐのだ。

 

さて、大会は、どうなったのか。

 

3.公開授業を参観して

 

(1)高等学校会場

各会場の参加者を合計すると、大会参加者は約150名。

大会は、堂々たる大成功であった。

 

午前中に行われた、高等学校の公開授業は、3クラスが同時開催

黒板に貼られた資料だけではなく、グループ活動をうまく取り入れて学習を進めていた。

少ないクラスは4人の生徒しかいない。

いったい、4人でどのような学習をするのか。

その疑問は、すぐに取り払われた。

授業者は、4人しかいないという、少人数の特性を生かしたのだ。

資料から調べたことを、白地図に協力してまとめる活動を取り入れたのだ。

さすがだ、うまい!

考え抜かれた、指導の工夫に感心した。

外は、強風に砂が飛び交い、港のブルーシートは天高く飛ばされて防波堤に打ち寄せる高い波に踊っていた。

生徒も、参観者も、そんな外の様子に気づきもせず、授業に集中していた。

この若者たちが、能登の未来を背負うのだと、嬉しくなった。

参観者も多く、大盛況であった。

 

(2)中学校会場

午後からは、中学校と小学校の公開である。

中学校では、電子黒板も活用しながらの授業が行われていた。

電子黒板で提示したものは、生徒に対してとてもインパクトがある。

それを分かっていて、本時の重点を意識できるように提示していた。

資料を拡大するだけではなく、電子黒板のインパクトを活用したのだ。

強風と横殴りの中、たくさんの参観者が熱心に参観していた。

受付には、なんと、会場校の校長先生が。

なぜ?!

運営役員は配置したはずなのに。

担当者はどうしたのかと、校長先生に尋ねると、次の答えが返ってきた。

「せっかくなので、参観していただきたくて、私が代わりになって、授業を見に行っていただきました。しばらくしたら、戻って来られます。」

先生方を育てたいとの、校長先生の心に少なからず心を打たれた。

どの会場校の校長先生ともお話をさせていただいたが、同じ思いが伝わってきた。

 

(3)小学校会場

2つの会場で行われ、それぞれに良い授業だったと伝え聞いた。

私は、役割上、片方しか参観できなかったが、簡単に様子を紹介したい。

本時は、グループごとに調べたり考えたりしたことを発表し、聞き合う活動が主であった。

5年生の自動車の単元であった。

各グループが意欲的に発表を行っていた。

私が注目したのは、紹介の仕方である。

壁新聞的に大きくまとめたものを見せながら…とここまでは良くみられる。

必要に応じて、資料を実物投影機で大型テレビに拡大して見せていた。

デジカメで大きく拡大したものを、壁新聞に貼れば事足りるような気もするが、その場で拡大することに大きな意味がある。

ライブ感がアップするのだ。

初めから拡大してあると、「ふ~ん。」と、分かるが、
その場で拡大してみせると、「なるほど。」と、納得する。

ICTのちょっとした使い方次第で、紹介する方も、される方も、グンと学習が楽しくなるのだ。

 

4.歴史に残る記念講演会

 

大会の最後の行事は、記念講演会である。

講師は、地元の歴史研究家であり、大学の教授でもある、開催地出身の方だ。

「奥能登の歴史と文化」という演題で講演をしていただいた。

1時間20分ほどの時間を、資料が1枚のみ。

パワーポイントのプレゼンは無し。

司会をしていた私は、出席者全員が最後まで集中して聴けるかちょっと心配がよぎった。

しかし、講師の先生が話し始めた瞬間、そんな心配は、全くいらないと確信した。

やや早口だが熱意のある語り口、奥能登への愛情と誇りがビンビンと伝わってくる。

今まで知らなかったトリビアな凄い話が、次から次へと出てくる。

ちょっとだけ紹介すると、

戦国時代に、七尾城へ攻めてきた二万の上杉謙信軍を撃退したこと。

その時、影で活躍したのが、地元の鍛冶集団であったこと。

その鍛冶集団が、鉄砲製造など、実は全国でもトップレベルの技術をもっていたこと。

日本最古の名入りの土師器が奥能登産であること。

その職人集団の作った土師器は、日本海沿岸はおろか北海道でも使われていたこと。

などである。

講演後の参加者の表情は、みな輝いていた。

明日への教育実践の力になったと確信している。

 

この話を聞いた感想はこうである。

かつて奥能登は、日本一の職人集団を生み出してきた。

その技術と人材は、各地に求められ、全国で活躍した足跡が残っている。

その地に生まれた誇りを持ちつつ、

現代にあっても、

世界に役立つ、知恵と技術をもった人材を輩出可能性を持っている。

是非、実現したい。

一度できたということは、もう一度できる力がある。
やるとの意志が大切なのだ。

 

5. むすび

 

石川県社会科教育研究会鳳珠郡大会は、

約150名の参加者を迎え、

歴史に足跡を残し、

未来へ一歩前進の歩みを記した、

参加者の心に火を灯す大会となった。

大会のために、汗し、心を砕いてくださった皆様に、心から感謝申し上げたい。

その御礼の気持ちを、凝縮してここに記したい。 

泊 和寿(とまり かずひさ)

石川県金沢市立三谷小学校 教諭
私は、子どもたちが目を輝かせて生き生きと学ぶ姿が大好きです。子どもが本気になって学ぶと、グワッと教師を越えていきます。今年も、そんな感動をめざしたいと思います。

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