2013.10.15
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特別支援学級でできる道徳授業の発想

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

 今回のつれづれは「特別支援学級での道徳授業」というちょっとディープ・・・でも必要な人には必要な話題です。

  東京都では「道徳授業地区公開講座」という取り組みがあり、特別支援学級でも学校公開日などに、道徳の授業を保護者や地域に公開しなければなりません。

 そのため「道徳の授業、どうしよう・・・。」と、困っている特別支援学級の先生も多いと思います。

 

 特別支援学級で道徳の授業をどうすすめるか?

 

 当たり前ですが、公開授業で見せるために道徳の授業を行うのは、本末転倒。

 普段から、どのようなスタイルで道徳の授業を進めるか、教師や子供の個性に応じて作り上げていく必要がありますね。

 特別支援学級の子供たちにとっても、やり方によっては道徳の授業はとても魅力的な授業となります。

 

 

「言葉をひろげる」という発想

 道徳には、いろいろな道徳的な言葉が出てきます。それを、具体的にはどういうこと?という学びを子供たちと行うことができます。

 「もったいない」って、どんなこと?

 「協力する」って、どんなこと?

 「親切にする」って、どんなこと?

 これを軸にすると、授業のアイディアが広がりますよ!

 

副読本を「読み聞かせ」するという発想

  道徳の副読本、実は読み聞かせに向いています。

  なぜかというと、長さ(分量)がちょうどいい。子供が集中して聞いていられる長さになっています。

 

「作業を取り入れる」という発想

  ずっと、音声言語主体の授業では、子供も飽きてしまいます。

  45分の授業の中に作業を入れることが大事です。

  おススメは「道徳ポスター」作り。

  主題にあった標語ポスターをつくることなんかは、楽しい活動になります。

  高学年では、標語を5・7・5の俳句にしてみるのも、表現方法の学習になりますね。

 

 

 さて一方で、特別支援学級によく見られる、「こんな道徳はもう時代遅れ」という例を。

 

抽象的な一問一答式

 「このとき、この主人公はどんな気持ちだったかな?」

 通常の学級では、よくこんな発問をして、授業を進めます。

 でも、「どんな気持ち?」という抽象的な発問を軸にして展開すると、失敗する確率が急上昇します。

 なぜなら、この授業スタイルは、多様な意見が出てくることを前提としているからです。

 特別支援学級では、児童の実態からして、多様な考えが子供たちの中から出てくることはあまり期待できません。

 結果的に、教師が一方的に話す展開の授業となってしまうという罠にかかります。

 

ソーシャルスキルトレーニング重視

 ソーシャルスキルの知識を持って、それを道徳の授業に生かすのはとてもよいことだと思います。でも、本に書いてある、ソーシャルスキルトレーニングをそのまま授業に用いるのは、あまりお勧めできません。なぜなら、ソーシャルスキルと道徳は、その目指すところが異なっているからです。

 

そもそも道徳の授業をしない

 根強いのがこの「そもそも道徳の授業をしない」という特別支援学級。

 その理由は、「トラブルが起きたときに、その都度行うのが効果的だから」。

 それはその通りなのですが、それは道徳の授業とは違います。

 その理屈が通るのなら、通常の学級でも道徳の授業は必要ないはずです。

 ですので、あえて断言しますが、「そもそも道徳の授業をしない」のは、道徳の授業にちゃんと向き合おうとしない、特別支援学級担任の言い訳です。

 告白しますが、つい数年前まで、わたしもこのタイプの教師でした。

 なので、特に長く特別支援学級に携わっていて「そもそも道徳の授業をしない」派の先生方、今からでも遅くはありません。道徳の授業をちゃんとやってみましょう!

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

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