この教育つれづれ日誌も第14期になりました。
幸いなことにまた書かせていただけることになりました。拙い話しばかりですが、引き続きよろしくお願いします。
今日は自閉症教育のコミュニケーションにおけるICTの活用についてのお話を少し。
先日、北海道自閉症協会さんにお声がけをいただき、実践報告する機会がありました。
この企画は、この春から北海道自閉症協会さんの担当の方と何度もやりとりさせていただき、是非実現したいと積み上げてきた企画でしたので、実際に開催することができ、参加してくださった方々には本当に心から感謝しています。
当日の参加者の方々の顔ぶれは実にさまざまでした。特別支援教育に関わる教員、児童デイのスタッフさん、保護者の方々、本当に多くの他職種の方々にお集りいただくことができました。これもまた主催者の方と実現したかったことの一つでしたので、嬉しいことでした。少しでも多くの方に、直に端末に触れていただいてその有効性を体感していただこうと前日に端末のセッティングをした甲斐がありました。
内容は「コミュニケーション」にしぼった話をさせていただきました。
学習指導要領にある「コミュニケーション」の話からスタートし、コミュニケーションの基礎はアナログにあること。
そしてICT機器を活用する際のメリット、デメリットについては、参加者各自のお立場でメモをしていただき、それぞれの立場におけるメリット、デメリットをグループワークでシェアしていただきました。この場面は、実に興味深くグループ間を回らせていただきました。同じ自閉症のお子さんたちに関わる人たちばかりですが、立場が変わるとそのメリット、デメリットは様々で、その違いを共有できたことがこのグループワークに大きな価値を持たせられたかと思います。それは、参加者の皆さんからの研修会後のアンケート結果からも明らかでした。初対面の方も多くいらっしゃる中でのグループワークでしたが、参加者の方々の意識が高く、グループごとに主体的に話し合いを進めていただくことができました。
後半は事例の紹介をさせていただき、その後、各端末に触れていただきました。今回はうちの学級で活用している「たすくコミュニケーション」アプリの使い方を皆さんで確認してもらい、各担当のお子さんの実際のコミュニケーション場面をイメージしながらお互いに意見を交わしていただくようにしました。
事例では、絵カードを用いたアナログでのコミュニケーションを積み重ねてきたこと、最初にアナログからデジタルに移行した際に失敗してしまったこと、修正をしてアナログから取り組み直したこと、再度デジタルに移行したことをお話させていただきました。
その中で繰り返しお話させていただいたことは「ICTを活用することによって現有のコミュニケーションスキルを失うこと」があってはならないということです。基本をアナログでしっかりと繰り返し積み上げ、その上でデジタルへ移行するのか、アナログでコミュニケーションスキルを上げていくのか、を判断することが必要であり、常に現有のスキルをチェックしていく必要があることをお話させていただきました。これはコミュニケーションに限ったことではないんだと私は考えています。以前お話しさせていただいた「スケジュール」などについても同様です。
これらの話を踏まえた上で、再度グループワークをしていただきました。実際に端末を皆さんで囲み、触れていただきながらでしたので、「家庭でのこの場面で使うと便利かもしれない」「こんな使わせ方はどうだろう」「うちの子に合わせると、こんなカードがあるといいな」という実にポジティブな意見の連続でした。
残念ながら設定されていた時間になったので、グループワークも打ち切りましたが、まだ時間があればさらにポジティブな支援方法の話し合いが行われていたはずです。
私自身にとって学ぶことの多い時間を過ごさせていただきました。
結論としては、いつものとおり「アナログとデジタル」をお子さんに合わせてカスタマイズして活用していく。ということです。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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