2013.09.04
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ちょっと真面目なお話。

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

ちょっと真面目なお話。

 いま、自閉症のお子さんへの「ICTを活用したコミュニケーションについて」お話する機会をいただいたので、資料を作成しているところです。

資料をまとめていて、ぜひ皆さんに一度お伝えしたいと思い、今日は?今日も?ちょっと真面目なお話を。

私たち教員は、日常の子どもたちへの指導・支援を学習指導要領に基づいて行っています。そこでICTの活用については、学習指導要領のどの部分に基づいて行っているのか、少し紐解いて整理しています。

「指導計画の作成と各教科全体にわたる内容の取り扱い」の中に「5 児童の知的障害の状態や経験等に応じて、教材・教具や補助用具などを工夫するとともに、コンピュータ等の情報機器を有効に活用し、指導の効果を高めるようにするものとする。」とされています。

 また、自立活動の内容「6 コミュニケーション」には、 

(1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること

(2)言語の受容と表出に関すること

(3)言語の形成と活用に関すること

(4)コミュニケーション手段の選択と活用に関すること

(5)状況に応じたコミュニケーションに関すること

とあり、(4)は

「話し言葉、各種の文字・記号、機器等のコミュニケーション手段を適切に選択・活用し、コミュニケーションが円滑にできるようにすること」とされ、「具体的指導内容例と留意点」として「自閉症のある幼児児童生徒で、言葉でのコミュニケーションが困難な場合には、まず、自分の意思を適切に表し、相手に基本的な要求を伝えられるように身振りなどを身につけたり、話し言葉を補うために機器等を活用できるようにしたりすることが大切である。」と明示されています。

私は、この部分に基づいて指導することが基本であると考えていますし、日常の指導場面で意識して指導・支援をしています。

 なぜ、いまここに立ち返る必要があったのかと言うと、私を含めてここのところのタブレット端末等を活用した指導・支援の流れを見ていると、「タブレット端末ありき」の流れを感じます。以前、ここで書かせていただいたように「アナログか?デジタルか?」という対極的な用いられ方がされているように思います。私は子どもたちの指導の狙いを明確にし、「アナログもデジタルも」用いて、その狙いを達成するための一つのツールの選択肢としてデジタル、タブレット端末等があるべきだと考えています。ノーテクもローテクもハイテクも指導・支援ツールとして検討した結果として、ハイテクがベスト、という結論に至り、用いるのがいいのではないだろうかと考えています。その過程では、もちろん他の方法も用いられることがあるでしょう。

 

 つい先日も、ある教員の方から「iPadがあるとどんなことができますか?」と尋ねられました。私は「どんなことが学習のねらいですか?」問い直しました。このねらいの部分をどう設定し、そこに導くためにどのような方法を取ることが、担当のお子さんの学習を伸ばすためになるのかを一緒に考えなければならないと感じたからでした。

 時を同じくして、いつも興味深く読ませていただいている「お道具箱日記」さんで、次のようなタイトルでブログがアップされていました。

 「iPadで本当にいいの?~支援技術の利用~」

ここでは「支援技術の基本に立ち返る」ことの必要性が説かれていました。私もこの考え方と同じに考えます。

 

 タブレット端末の持つメリットは、これまでの指導・支援方法の視点を変えるぐらいの大きなものです。ですからこれだけ各地、各校で導入が進んできているし、それを否定するつもりは全くありません。ただ、導入が進み、具体的な活用方法が数々出てきたいまだからこそ、このねらいにそったツールの選択というところにもう一度視点をあてて、じっくり考える必要があるのではないだろう、そんなことを考えています。

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

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