2013.08.30
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場面緘黙(その2) 他

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

前回は、角田圭子さんの講演会から「場面緘黙」を紹介しました。

今回から、私なりに理解している「場面緘黙」について触れたいと思います。

まず、用語について紹介します。

特別支援教育に関する用語は、日本では、アメリカの「DSM-Ⅳ-TR精神疾患の分類と診断の手引」をよりどころに話をすることが多いです。

DSMというのは、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの最初の3つの単語の頭文字を使ったものです。

1952年にDSM-Ⅰが出されて以来改訂が続けられ、現在2013年にDMS-Vが発表されました。正式な日本語訳が出るまでは、このDSM-Ⅳ-TRが有効とおもわれます。ちなみにTRというは、'Text Revision'の頭文字で「改訂版」の意味です。

1994年にDSM-Ⅳでselective mutismが用いられました。それまではelective mutismという語を使っていました。現在このDSM-Ⅳの日本語訳では「選択性緘黙」という用語が使われています。しかし、「選択性」が誤解をまねくことが多いので、「場面緘黙」という言い方をしている場合も多くあります。

electiveとselectiveは共に「選ぶ」という意味に理解されています。

しかし、electiveは、「(自分の意志で)選ぶ」に対して、selectiveは、「(自分の意志で選ぶのでなく)周りの条件によって、緘黙という状況を選ばされる」というような意味合いがあるそうです。

用語一つとってみても、様々な経緯があるようです。今定まっていると思われる用語についても、今後議論や再検討が重ねられる必要があるようです。

ただ、忘れてはならないのは、どのような用語を用いようと、「場面緘黙」で困っている苦しんでいる当事者やその当事者を取り巻く家族や関係のみなさまが多くいると言うことです。

用語に関しての議論はそれなりに必要で大切なのですが、「場面緘黙」を認知し、その症状をいくらかでも改善することも、大事であることを忘れてはならないと思います。

私は、行動を起こすことも大切だと思いました。前回の講演は有意義に感じました。今度は、富山でも「おしゃべり会」というのがあるそうです。時間の都合をつけて参加できればと考えています。
[参考:Wikipediaの場面緘黙、DMS、及び『場面緘黙Q&A』(学苑社、かんもくネット著、角田圭子編)]


全く話しを変えます。

「学びのピラミッド」をご存知でしょうか。

これは、参加型学習の一つの形態である、協同学習(Cooperative Learning)または協働(Collaborative Learning)の概念を紹介するときに用いるようです。

学習者が何かを学ぶ時、「どのような教え方」を受けたか、ということが、その学んだ内容をどのくらい保持できるかに差がでる、ということをきっぱりと提示してくれるからです。

そうです、どんなに素晴らしい内容であったとしても、ただただ先生が生徒の前で、延々と講義をするだけでは、何と、恐ろしいことに、その内容は5%としか保持してもらえない、と言われています。

つまり、「学びのピラミッド」とは、学習者が学んだ内容を保持するためには、どんな学び方が有効であるか、ということを示唆するものなのです。

これは、アメリカのNTL Institute(国立訓練研究所)が過去に発表したもので、この説によると、講義を聴いただけでは、学習者が内容を5%、読めば10%、視覚教材を使えば20%、デモンストレーションをすれば30%、グループ討議で50%、
模擬演習で75%、そして実践または他者へ教えることで90%の内容が保持できるということです。
(参考 http://soafrica.exblog.jp/19276057)
(参考 http://www.kitano-j.sapporo-c.ed.jp/topics/2012/a/016880.html

ピラミッドの形は、参考のサイトをご覧ください。
自分が学習したことを、誰か隣の人に説明することは、大切な学びのスタイルであることが言われています。

先日川口北高校の小池由美子先生の講演を聴く機会が富山でありました。
国語の授業実践で、学び合いのある授業を通して、生徒の信頼感が深まり、学びの質が自ら高まったことを紹介されました。これが、生徒にとどまらず教員の意識変化に結びつくに至ったと、学力だけに終わらない効果についても触れられました。小池先生は、「学びのピラミッド」という言葉も概念も使われませんでしたが、私は、少なからず関連があったのではないかと感じて聴いていたのです。
それで「学びのピラミッド」について触れたくなったのです。

私は、自分の授業を振り返って、講義調子、説明調子で終始していないか反省しています。
全てが参加型学習に向いているとは思いませんが、どの単元、主題、活動で、どのような学習形態を選んだらよいか、もう一度考え直してみようと思います。
来週から始まる授業の準備が少し忙しくなりそうですが楽しみです。

さあ2学期がスタートします。気持ち良く9月を迎えたいものです。
 

追伸

今年の甲子園良かったです。 

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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