2013.09.02
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わからないランキング1位「評価」

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

 授業研究会などでは、いろいろな視点で授業を振り返ります。


 教材は有効だったか?
 発問は子供にとってわかりやすかったか?
 評価は適切だったか?
 時間配分は?
 授業展開の流れは?
 板書は?
 指導計画は?


 この中で、特に若手の先生から「わからない!」という大合唱がきこえるランキング第1位は、何だと思いますか?

 私のこれまでの経験では、授業における「評価」がダントツ1位です。

 「評価」ってよくわからない! ただ単に子供にABCをつけるだけが「評価」ではないようです。

  では「評価」とは、いったい何なのでしょうか?

 授業における評価とは、授業そのものの価値を判断し決めることに留まらず、次にそれを生かすことまでを考えておくことが必要です。したがって、授業に関して何らかの基準でその価値を判断し、次の授業に向けてそれを生かすことです。

 ・・・と言われたところで、大切なのはわかるけど、いったい、何をどうしたらよいのだかわからない。それよりも授業では教材研究とか、板書の仕方とか、発問の仕方とか、大切なことが他にたくさんあるんじゃないの? けど、評価についてもちゃんと考えたふうにしておかないと叱られちゃうから、一応、形だけでも指導案に載せておこう・・・。

 と、先生方がなんとなく避けて通りたくなるのが、この「評価」というジャンル・視点・観点だと思います。

 その原因は、理論先行となりやすいジャンルであって、とにかく抽象的になりやすいから。逆にいえば、理論派の先生は、この「評価」のジャンル、得意かもしれません(笑)。

 さて、それでは「評価」というモンスターに対峙してみましょう。

1.「どんな目的で」
 実は、これが一番大事。 通知表のため? 授業改善のため? 言われたから仕方なくやるため?(笑)
 評価の目的は、「今、この子はここまでできた。だから今度はここを目標にしよう。」ということが基本だと思います。
 授業の前に「この子はこれができるかなあ?」とチェックするのが専門用語でいうと、「診断的評価」。
 「ここまで教えてきたけど、理解しているかな? 次はどうしようか。」が、「形成的評価」または「指導と評価の一体化」
 「よし、最後までやったぞ。で、結局どこまでできたんだ?」というのが、「総括的評価」。
 この流れが、「PDCAサイクル」と呼ばれるものです。

 専門用語に怯えないようにしましょう。

2.「誰が」
 評価をするのは教師の仕事だ!・・・とも言い切れません。
 だって、子供自身が自分のことを評価したっていいじゃないですか。
 先生たち、よく言いませんか「みなさん!わかりましたか?」って。
 これは子供たちに「授業の内容がわかった!」という「自己評価」をさせているのです。

3.「誰を対象にして」

 子供に決まっている!・・・わけでもないのです。
 実は、ここが「評価」のややこしいところ。混乱の原因。
 さっきの「誰が」のところでも書いたことです。
 「自分のことを評価したっていいじゃない!」
 そうです。授業をしている教師が、自分のことを評価するのです。
 自分の授業はどうだったかな? この授業の進め方で、子供たちはわかったかな? この板書はわかりやすかったかな? この発問は、子供たちに届く言葉だったかな?  これも授業の「評価」なんです。
 研究会で「評価」について議論しているときに、ここを混同しているケースが非常に多い。
 だから、「評価はわからない!」ってなってしまうのだと思います。

4.「どのように」
 指導案を見ると、「評価の方法」なんていう項目があります。
 そこに、何と書いてあるかというと【観察法】【ワークシート】なんていうのが多いです。
 なんか、こう書いておけば許されるみたいなニュアンスで(笑)。
 別にそれで間違ってないのですが、「何のため」なのかをもう一度思い出すといいのです。
 だって、通知表のためなら、客観的な指標が必要だし、もちろん記録としてペーパーテストのようなものが一番妥当だと思います。
 授業改善のためなら、あとで、教師自身が振り返りやすい方法がいいでしょう。アンケートとか。
 また個別に子供を伸ばすためなら、そのときの子供の様子を、克明に文章で記録しておくのも良い方法だと思います。

 参考文献:金子郁容『学校評価』筑摩書房 2005年石塚謙二監修『知的障害教育における学習評価の方法と実際』ジアース教育新社 2011年

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

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