2013.08.28
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学びの質が社会を変える

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

8月22日のNHKの朝のニュースの中で、日本の高校生がアメリカのハーバード流の学びの体験を行ったというものが放映されていました。ハーバード大学を中心としたアメリカの現役大学生が、小グループのリーダーとなり、決められたテーマについて日本の高校生が議論をしていくというものでした。

大学受験を意識した日本の高校生の学びは、暗記や正しい答えを求めることが中心になります。そういった暗記中心とした学びが、社会では十分に役立ちにくいことは、近年の日本の社会の状況を見れば分かると思います。その点、アメリカでは少し違った視点での教育をしています。あるテーマについて、少人数で、議論を行い、意見を交わす中で、新しい発見をしたり、自分の考えを深めていきます。高校生の時期にそういった学びを繰り返す中で、自分が学びたい方向性を探し、大学に進んでいきます。アメリカの教育が全て良い訳ではありませんが、日本における大学を中心とした「高校-大学-社会」のステップアップのシステムは、制度的に様々な問題があると言わざるを得ません。特に、「高校-大学」のステップには、多くの問題があり、それが、高校での学びの問題、中学での学びの問題と順に下がってきているように思えます。

○一発勝負を避け、AO入試などで入学した学生の学力の低さが大学の通常の授業の障害になっている。
○大学に入ることが目的化し、入ってから、遊びやバイトが中心に生活になってしまう。
○高校時代にしっかりと進路について考えていないため、大学での学びに意欲がでない。
○就職活動の長期化などで、大学での授業が行いにくい。
○大学を終えても、就職することができない。

昨年の夏休みにアメリカを訪れた際、大学の関係者や大学を目指す高校生と大学に入ることについて話をしたことがあります。アメリカ人の高校生は、日本人の高校生と比べ、視野が広いという印象を受けました。また、大学が学生を選考するシステムが日本とは違っており、そのことが、高校などでの教育へも影響を与えていると感じました。

今、専門家が、大学入試センター試験のあり方について議論しています。どういう形になるのか、まだ見えていませんが、議論を進めていくのは、良いことだと思います。大学を含めた学校における教育の質はそのまま社会の質に影響を与えるものだと思います。アメリカの大学で研究をしている日本人が、日本の大学生は、努力の総量が少ないと指摘していました。

より良い社会にするために、それぞれの立場で、常に議論を行い、良い実践を行っていくことが大事なのだと思います。

忙しい2学期になります。皆さん、体や心を大事になさって下さい。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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