2013.08.13
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

「場面緘黙」ってご存じですか

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

今日、私は『場面緘黙について考える』という
講演会に行ってきました。

たまたま「かんもく」という言葉を検索で調べていたら
この講演会の存在に巡り会ったのです。


私は2つのサイトにも出会いました。
ひとつは、「かんもくの会」です。

もう一つは、「かんもくネットワーク)です。

詳細はこれらのサイトに譲ることにします。


私が気になったことがいくかあります。
まず出現率です、
講師の方の話では、0.2~0.5%(外国では0.7)程度
いるそうです。やや女子に多い傾向があるそうです。
1000人の児童生徒に対して2~5人の割合になります。
富山県の場合は、大ざっぱに約6000人が高校入試に臨んでいるので、
1学年に12~30人程度いると想像できます。
あくまで統計的であります。
場面緘黙の症状で苦しんでいる方は、小学校1年から高校3年生までで、
144~360人にもなるかもしれません。
この数字をどう考えたら良いのでしょうか。
私は、あくまで統計上かもしれませんが、
大きいのではないかと感じました。

次に、発症する時期は、入園時または入学時が多いそうです。
ということは、保育園または幼稚園、そして小学校の低学年を
担当する先生方には、注意していただきたいものです。
この時期を担当される先生方には、十分な『場面緘黙』に対する
知識と理解、さらにできれば好ましい対処法や関わり方等を
学んでいただきたいものです。
なぜなら『場面緘黙』は、早い時期に適切な対応を行うことで
改善することが多いからです。
8、9歳からでは、改善がゆっくりになるそうです。
別の研究者の統計では、約12年後に7割が改善し、完全回復は
4割とのことです。
早期発見早期治療(?)が必要なようです。


日常生活での困難度についてです。
家庭では、普通に話せる場合が多いのですが、
学校や家庭を離れると一言も声を出すことができない方が
多いようです。
買い物をすることを、みなさん想定してみてください。
レジがある場合は、声を発せずお金の支払いをして商品を購入することが
できますね。以外と声を発せずに1日を過ごすことが可能かもしれません。
(少々残念な状況ですが)
 

では、マックやミスドではどうでしょうか。
対人の店で買い物や注文をする場合は難しくなるようです。
でも、「ゆび差し」ができるカードがあれば大丈夫です。
カウンターに品物や商品名と値段などが書いてある
一枚になったカードが置いてあれば
『場面緘黙』の方だけでなく、恥ずかしがりの方にも
有効ではないでしょうか。
お店で食べたいものを食券販売機から券で購入する
スタイルのところは、『場面緘黙』の方には敷居の高くない
場所になるようです。

よけいな事かもしれませんが、
アルバイトなど定員さんにも
声を出すのが苦手なお客さんもいることと
その場合にもできるだけ自然な対応で
お願いしたいと思いました。
(「えっ?!」という表情をされることが多いようです)

私は、声に出して注文をすることなどを当たり前に感じていましたので、
声に出すことに苦しんでいる方に気づきませんでした。
色々な場所やお店等が『場面緘黙』の方にも
ある意味ユニバーサルなスタイルになっているかどうかを
考え直す必要があるのではないかと感じました。
(同時に、聴覚障害の方のコミュニケーションの伝達方法
では、手話が思いつきます。
もしかしたら「筆談やメモ」等がコミュニケーションを
成立させるために大事なのかもしれないと思いました。)


買い物に限らず、
『場面緘黙』の児童生徒は、通常の私たちよりも
 周りの事柄に「不安」を感じる度合いが強いようです。
 様々な「不安」を軽減するように配慮することが大切なようです。

幾つか、学校で児童生徒に役立つ手だてを教えてもらいました。
1.授業では、クラスの前に出て発表することがありますが
  自分の席ですわったままでもよいとする。
2.舞台での発表での立ち位置も、舞台の後ろの隅でもよいとする。
3.何も持たないよりは、何か道具を持つか、道具の後ろに立つ。
4.1人での台詞でなく、友達と一緒に声を出す。
5.1人での動作を求めるのでなく、手をつないで、少し前後に揺らしなが
らの動作をする。
6.少人数で、行ったことのある場所、知っている子がいる場所にする。
7.目を見て答えを求めるのではなく、横に並んで答えを求めない話し方を
心がける。
8.はい、いいえで答えられるような問いかけ方をする。
9.選択肢に○で答えられるようにする。「わからない」を項目に入れる。
10. 初めての活動について予定を知らせる。


最近の新聞掲載について次のブログでの紹介もありました。
http://smjournal.blog44.fc2.com/blog-entry-714.html


『場面緘黙』については、困っている方々がある程度いるのに対して、
まだまだ世の中で認知もされていない現状があるようです。
当事者と家族、教師や臨床心理士と限られている傾向があります。
特別支援教育、発達障害支援法の対象としての
認知が進むことも願っています。

 

P.S.
緊急地震速報も有感なし、誤報となりホッとする。
「オオカミが来たぞ」とならないことを願う。 

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

同じテーマの執筆者
  • 吉田 博子

    東京都立白鷺特別支援学校 中学部 教諭・自閉症スペクトラム支援士・早稲田大学大学院 教育学研究科 修士課程2年

  • 綿引 清勝

    東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)

  • 郡司 竜平

    北海道札幌養護学校 教諭

  • 増田 謙太郎

    東京学芸大学教職大学院 准教授

  • 植竹 安彦

    東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士

  • 渡部 起史

    福島県立あぶくま養護学校 教諭

  • 川上 康則

    東京都立港特別支援学校 教諭

  • 中川 宣子

    京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

  • 丸山 裕也

    信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭

  • 下條 綾乃

    在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師

  • 渡邊 満昭

    静岡市立中島小学校教諭・公認心理師

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop