2013.07.25
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

夏休み-長短期計画と「チャレンジ3015」-

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

長い(?)夏休みが始まりました。
この夏休みを生かすかどうかはみなさん次第ですね。

私は、長期と短期に分けた計画を立てることにしています。
1日の計画、1週間の計画、夏休み終わった時の姿の3種類です。
朝起きて、今日すべき事、今日の夕方までに終わっておきたいこと
を1枚の不用紙に書き出す。終えたものから線を引いていきます。
毎日平均10項目程度何かあるものです。
線を引いて消していくことで、何を終えたか分かり達成感を味わいます。
残ったものは翌日以降に持ち越すことになります。

次に、日曜日の夜に、次の週の大ざっぱな計画を立てます。
締め切りのある原稿や作成しなければならない書類や教材研究の類を
思い出すことにしています。
大ざっぱに一週間を見通しを持つことは大事です。
段取りを考える習慣付けにもなります。

最後に、夏休みが終了するときに、達成したい事柄や目標を考えます。
私の場合は、読書する本の冊数、英語のページ数などできるだけ具体的に
数値で示すようにします。長い夏休みが終わってみると、夏休み前と
変化がないことを避けるためです。
ちなみに、本を10冊(内容やページ数は問わず)読む。DVDなどの洋画を5本
以上観賞する。腹筋腕立てなど基礎体力運動を行う。10文字以上の英単語を
新たに100個覚える。1万2千歩以上歩く。英文エッセイを10000行以上書く。
ちょっと欲張りすぎかもしれません。計画倒れになりそうですが、終わった
ときに、これだけはできたと言えるものを持ちたいのですね。

さて、ここで富山県独自に取り組んでいるものに「チャレンジ3015」という
ものがあります。
私は、これを生徒への英単語練習、基本文練習に利用してみます。
「チャレンジ3015」の3015というのは、富山県で一番高い山「立山(雄山)」
の標高です(皆さんの中には映画化された『剱岳』の方をご存じの方もあ
るかもしれませんが)。

この「チャレンジ3015」を検索で調べると、次のような解説に出会います。

富山県には「みんなでチャレンジ3015」という楽しく運動することを目的
とした冊子があります。3015とは富山県で一番高い立山の高さを表していま
す。冊子の中にはいろいろな運動が紹介されており、その中から自分で運動
を選んで3015点のゴールを目指します。

元々は体育的活動、運動に目当てをもって継続して取り組めるようにするた
めに考えられたツールです。行った活動の回数や距離などに応じて、3015ま
での枠や○やマスを塗りつぶしていくようです。
例えば、「縄跳び」に取り組むとしましょう。
10分間縄跳びを実際にすれば、10コマ進む。10回で1コマ進む。など項目や
マスの進み方は、生徒児童の発達に応じて変えることができるようです。

私は、立山までのロードマップのようにくねくねとしたマス目が、山の麓か
ら立山頂上まで描かれているシートを生徒に渡します。
そして次のように言います。

「1学期に学習した単語を書いて練習してください。1枚練習プリントを使
ったら、10コマ進めます。夏休みは終わるまで、何コマまでやれるかがんば
りましょう。」

生徒には、マス目を塗りつぶさせること、またシールを与えてそれを貼ることなど選ばせます。スタンプを押すこともできます(100円ショップで購入できます)。

富山県で配布している台帳を私は、少し厚手の紙に拡大コピーして使うようにしました。

ただ、単語や基本文の練習を「プリントやノートに書いて覚えなさい。」だ
けでは、やる気にならない場合も、このように自己評価ができ、達成したか
どうかが視覚化されるものを利用するのは有効であると思います。

富士山が世界遺産登録されたので、「3776チャレンジ」にすれば良かったか
なと思います。でも、私は富山県民の1人として、やはり立山に愛着とこだ
わりもあるので、3015という数字を大切にします。
各都道府県または地域にも、このような例以外にも数値を用いたチャレンジ
や似た取り組みがたくさんあるのではないでしょうか。
山の高さだけでなく、川の長さ、有名な寺院の建立した年、著名人の生まれ
た年など、身近な数値に注目し新たな発見と、それを学習活動に取り入れて
みても良いのではないでしょうか。

A君は、夏休みが終了する頃に、立山のどの辺まで登るほどの英単語練習が
できているでしょうか。
ただ注意しなければならないのは、この取り組みが、実際に英単語を覚えて
いることに繋がるかです。決して塗りつぶすことを目標にしているのではな
いからです。大事なことは、楽しみながら、自然に力が付くことなのです。さ
て、そんなうまい話はあるのでしょうか。私にこそ『チャレンジ3015』が必
要なのかもしれません。真っ黒に日焼けしたA君の成長に出会えることを新
学期に期待したいものです。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

同じテーマの執筆者
  • 吉田 博子

    東京都立白鷺特別支援学校 中学部 教諭・自閉症スペクトラム支援士・早稲田大学大学院 教育学研究科 修士課程2年

  • 綿引 清勝

    東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)

  • 郡司 竜平

    北海道札幌養護学校 教諭

  • 増田 謙太郎

    東京学芸大学教職大学院 准教授

  • 植竹 安彦

    東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士

  • 渡部 起史

    福島県立あぶくま養護学校 教諭

  • 川上 康則

    東京都立港特別支援学校 教諭

  • 中川 宣子

    京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

  • 丸山 裕也

    信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭

  • 下條 綾乃

    在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師

  • 渡邊 満昭

    静岡市立中島小学校教諭・公認心理師

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop