2013.07.09
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「キレちゃう子」への支援論

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

 今回は、子どもの個別の支援についてです。その中でも、まだまだ学校現場で手を焼いてしまう「キレちゃう子」への支援をつれづれ語っていきたいと思います。

 

 私も、これまで数々の「キレちゃう子」に出会ってきました。

 若い頃はよく、「キレちゃう子」にキレちゃったり(笑)。 

  

 「キレちゃう子」には、キレてしまっているときではなく、落ち着いているときに振り返りをすることが大事だと言われます。

 私はこの3つの視点で振り返ることが大事だと考えています。

 

1.「何をしたのか」=行動

2.「どんなことを感じたのか」=感情

3.「どうすればよかったか」=認知

 

 たとえば、こんな子がいました。

 近くの友達に言われた一言にキレて、自分のまわりにあった物を手当たり次第投げつけています。

 

 そこに先生がやってきました。

 

 まずは落ち着かせて、落ち着いてきたときに話を聞きます。

 

「自分が何をしたのか、言ってごらん。」(行動)・・・「えんぴつを投げちゃった。」

「そうか。その時、どんな気持ちだったのかな?」(感情)・・・「ムカムカした。」

「そうなんだね。どうすればよかったかな?」(認知)・・・「深呼吸すればよかった。」

 

 たったこれだけ?と思われるかもしれません。

 でも、この3つの視点で、振り返りをできている先生はそう多くはないと思います。

 

 繰り返しますが、大切なのは複数の視点で振り返ることです。

 

 最近は「キレちゃう子」への支援方法について書かれた本などもたくさん出版されています。

 でも、そこに書かれていることを実践に使う場合は、少し注意したほうがいいかなと思うときがあります。

 

 「行動」の専門家は、行動に特化した論を展開しています。

 同様に、「感情」や「認知」の専門家は、「感情」や「認知」面からのアプローチに特化した論を展開しています。

 

 特化された支援方法は、とてもわかりやすいです。

 でも、個別の支援は、バランス良くやりたいものだなと思います。

 そのためには、いくつかの方法を知ることが必要です。

 専門家が編み出したアプローチを、いかに編集できるか。

 それも教師の技量のひとつかなと思います。

 

 

 余談ですが、私も人並みに人間関係でイライラしたり、ささいなことでムカッとくることがあります。そのときは「行動・認知・感情」の振り返りをするようにしています。

「あんなことしちゃったなあ。」「だけど、あんな気持ちだったんだよなあ。」「こうすればよかったなあ。」

 以前なら酒場でベロベロでした(笑)。

 自分への「個別支援」。これも大事ですね!

 

 

参考文献:小林正幸他編著『ソーシャルスキルの視点から見た学校カウンセリング』ナカニシヤ出版 2011

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

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