2013.06.27
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

教師道場で得たもの(1)「授業改善、初めの一歩」

東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士 植竹 安彦

心が動く、その時に

 土作りから子どもたちと頑張った、学校の畑でキュウリとナスを初収穫しました。子どもたちは無農薬の取り立て野菜を持ち帰り、さっそく家庭で調理してもらい「おいしかった~」の感想を聞きました。

 昨今、つねづね思うのが、物事の因果関係を知らない子どもたちが増えているということがあります。これは、リモコンやテレビゲームなど、ボタンを押せば結果が出るものが多く、便利な半面、そのしくみを学ぶチャンスが激減していることが理由だと思っています。

 野菜の生長過程をとっても、花が咲き、実が膨らむといったことを実感としてもち辛い世の中になっているように思います。人が水を飲まないと死んでしまうように、草花も水分が無ければしぼんでしまったり、枯れてしまったりするということを肌で感じる経験を、心が柔軟な学齢期にしてほしいと思います。

 手間暇かけて育てる経験は、相手に気持ちを向けたり、気にかけたり、互いを大切に思う気持ちを育てることにつながるのではないかと思います。

 そして、今回観察日記を子どもたちがつけている中で嬉しく思ったことがあります。それは、まだ緑色のトマトを見て、「先生、ピーマンできたよ、できたよ」と教えてくれた子がいました。でも、よーく見ていく中で、「あれ、ピーマンじゃない、トマトだ。ピーマンみたいなトマトができた」と、まだ熟す前のトマトは緑色なことに気付いたことを興奮気味に教えてくれました。

 日ごろ、食卓やスーパーで赤く熟したトマトしか見ない子どもにとり、熟す前の緑のトマトは未知なるモノの発見と映ったようです。

 まさに自分で見つけるからこそ発見であり、「心が動く出来事(感動)」が深い学びや、次への学びへの興味・関心や学ぶ動機につながることを一緒に感じられた瞬間でした。そんな感動のある学びの場をもっとつくれたらと思います。

 授業改善、初めの一歩(東京教師道場での学びより)

 6月に入り、私の勤務校では、初任者や2年目、3年目の先生の研究授業が多く行われるようになってきました。今年は、研究研修が私の校務分掌なので、若手の先生方の研究授業を観察し、研究協議会を進めていくことが増えています。

 

 そこで、今回は「授業改善」をテーマにお話をしていきたいと思います。

 

 東京都では、東京教師道場という4年目から10年目程度の教員を対象にした研修制度があります。2年間に渡る研修で、毎月、各教科や専門教育ごとに授業研究を行います。私自身、平成22年度から2年間、肢体不自由教育部門の教師道場で研修させていただき、「教員人生が変わったなぁ」と思えるほど、とても良い時間を過ごさせていただきました。ですので、今回はその経験に基づいてお話ししたいと思います。

 私の時は、東京都の肢体不自由特別支援学校16校から6名の部員が集まって1班を作りました。その1班にリーダーという助言をしてくださる先生が1名ついてくださり、毎月順番に、それぞれの所属校に部員全員が集まり、授業研究(研究授業)を行います。リーダーの先生がとても素晴らしい方で、インリアルアプローチというコミュニケーション障害のお子さんへの指導を長年されていたので、インリアルで用いるビデオ分析の手法で、私たちの授業についても指導してくださいました。

「癖(無意識)」の意識化 

 まず、授業改善の第一歩として、「自己認知を高める」ことから行いました。生の授業を部員とリーダーに見ていただいた後、その授業のビデオ映像を通して振り返りを行います。この時に、自分が無意識にしている「癖」を「意識化」することを丁寧にしていただきました。

 私の場合、しゃべっている言葉と、自分が行っている動作が一致していないことがあるという場面がありました。授業展開を焦ったために、言葉は「準備が大切」と話しつつも、手では1つ前の展開で使った教材を片づけていました。そこで、リーダーからは、「子どもたちは、教員の言葉と動作を見て学んでいる」のだから、「言語と動作を一致」させることが不可欠であることを、ビデオ映像を示しながら教えてくださいました。この他にも、発問をよく練っていない場面では、「えー」など、聞き苦しい言葉が多くなっていることなど、自分では気づいていない癖を、いくつも確認することができました。

 授業改善をしようにも、「何をどのように」改善すればよいのか、「自分がイメージできたものしか改善できない」ということの気付きは、本当に大きな意味がありました。

 ビデオの中では、無意識だったけれど良い点も示してくださいました。良い点についても意識化することで、意図的に良い指導技術を発揮できるようになります。

無くて七癖

 この教師道場の経験から研究協議会の中で、必ず若手の先生には、研究授業のビデオ映像を通して、無意識にしている「癖」を、良い点も改善点も伝えるようにしています。

 授業改善の第一歩として、ぜひ「無意識にしている癖の意識化」をしてみてください。「無くて七癖」ということわざがあるように、どんなに熱心に授業準備をされていても、自分の癖はあると思います。良い点も改善点も、早く気付き、自分の強みに変えていくことが、大切ではないでしょうか。

 

 次回も、授業改善の視点を少しお伝えできればと思います。

 

 湿度が本当に高い季節です。早めの水分補給を心がけ、熱中症にならないように子どもも大人もしていきたいと思います。では、また次回もお付き合いください。

植竹 安彦(うえたけ やすひこ)

東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士
肢体不自由教育からの視点を中心に、子どもたちの発達を支えるために日々できることを一緒に考えていきたいと思います。

同じテーマの執筆者
  • 吉田 博子

    東京都立白鷺特別支援学校 中学部 教諭・自閉症スペクトラム支援士・早稲田大学大学院 教育学研究科 修士課程2年

  • 綿引 清勝

    東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)

  • 岩本 昌明

    富山県立富山視覚総合支援学校 教諭

  • 郡司 竜平

    北海道札幌養護学校 教諭

  • 増田 謙太郎

    東京学芸大学教職大学院 准教授

  • 渡部 起史

    福島県立あぶくま養護学校 教諭

  • 川上 康則

    東京都立港特別支援学校 教諭

  • 中川 宣子

    京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

  • 丸山 裕也

    信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭

  • 下條 綾乃

    在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師

  • 渡邊 満昭

    静岡市立中島小学校教諭・公認心理師

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop