2013.06.12
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研究授業への道

石川県金沢市立三谷小学校 教諭 泊 和寿

       

 「温野菜サラダうまい!」   「柏の木漏れ日に学ぶ」

 

トマリンの「あゆみ」 研究授業への道 編

 

1.研究授業はなんのためにするの?

 

日本の学校では、一般的に研究授業をします。

 

(1)    授業をする先生が、より上手な授業をできるようになるための練習のため?
 
(2)    その学校の先生方の学び合いの機会として?
 
(3)    子どもたちが、よりよい学びをすることができるようにと願って?

 

ある先輩が言いました。

 

「わしは、輪中の授業をするならば海津市へ、あたたかい地方のくらしの授業をするならば沖縄へ、必ず行って、自分の目で見て取材してくる。君は、輪島塗をするんだろ? なら、次の土日に輪島へ行ってくるといい。」

と。

 

そのくらいの労力をかけてでも、研究授業はする価値があるというのです。

 

また、ある先輩は言いました。

 

「君は、研究授業が役に立つと本気で思っているのかね?! 研究校の子どもほど、先生の目が届かなくなって、おかしいことになっている。研究は、真面目にやっていいものなのかな?」

と。

 

わけのわからない研究で時間を浪費して、子どもを見失ってしまった事例を多く見てきたから、どうしたら本末転倒にならない研究になるのか考えて、子どもためになる研究の実践例を示してほしいというのです。

 

さて、研究授業は、いったい何のためにするのでしょう。

 

教員のみなさんは、どう考えますか?

 

2.研究授業への道

 

近年、年下の先生方から、

 

「どうやって、そんな指導案を作ったり、研究授業をしたりするのですか? うまくできないのです。」

 

などと相談を受けることが増えました。

 

そこで、自分の場合を紹介します。

 

もちろん、やってよかったと実感していることだけに絞ってです。

 

今まで話したことのない、企業秘密の部分もあります(笑)

 

Q&Aで紹介します。

 

3.研究授業ってどうしてる? トマリン版【Q&A】コーナー

 

 読んでも頭に入らず、オーバーフローしてしまう可能性が大です。

 なので、参考にしようなどとは思わないでよいです。

 「自分の場合と比べて、トマリンの研究授業の甘さを発見してみよう。」

 くらいの気持ちで読んで下さればよいです。

 

Q1.研究授業をするときに、教材研究はどれくらいの時間かけますか?

  A1.すると決まった時から当日までです。

     たいていは、数週間から数か月間くらいになります。

     教えると決まっている教材は、日頃からコツコツと調べたり集めたりしています。

     とすると、授業化するのに、数年がけの場合もあります。

     いつでも、どこでも、思考が勝手に教材研究を始めてしまいます。(笑)

 

Q2.教材研究では、どんなことをしていますか?(指導計画を立てるまでに)

A2.単元によって多少違いますが、

(1)  学習指導要領を読みこむ。

(2)  教科書や資料集を読み込む。

(3)  見学、取材に行く。(写真・映像・文章資料の収集、インタビュー 等)

(4)  先行実践をした先生の実践記録を読む。

(5)  先行実践者やベテランの方にアドバイスをもらう。

(6)  テレビ、ラジオ、新聞等から収集しておいた資料の選別と分析。

などをしています。

 

Q3.どのように指導計画を立てますか?

A.私の場合は、

(1)  子どもに、身につけさせたい「概念」や「ものの見方と考え方」を、とことん哲学して、明確にする!

(2)  子どもに、身につけさせたい「技能」や「知識」を明確にする。

(3)  教材研究した中から、自分と子どもに一番合っていると感じる中心教材を選定する。

(4)  教材と出会ったときに、子どもの追究意欲に火がつくような出会わせ方を考える。

(5)  追究意欲が、自然に高まっていくようにと考えながら学習計画を立てる。

(6)  学習に必要な資料を準備する。

(7)  導入や本時やラストなど、ポイントになる授業を具体的にイメージし、計画していく。

と、なります。

この過程で、同学年の先生方や、他教科の先生方、管理職の先生、他校の先生方などにアドバイスを求めることもあります。同学年の先生方には必ず、あとは経験豊かで、真摯に共に考えて下さる方、最低三人くらいにアドバイスをもらえたら、たとえ今回の指導計画や授業が上手くいかなかったとしても、自分自身がレベルアップしていることを実感できるはずです。せっかく研究授業をするのですから、徹底して取り組むべきです。

 

Q4.本時案はどう立てていますか?

A4.学校や地域によって、指導案の書き方は様々です。

ですから、これは不変の部分だろうと思っていることについて書きます。

(1)  本時のねらいを設定します。

1時間にたくさんしようとすると、うまくいかないか、時間がなくなるか、底の浅い学びになる恐れがあります。原則、1時間に1つがよいと考えています。

(2)  本時に入る直前の子どもの状態をイメージします。

前時の子どもの意識や既習を大切にした本時にしたいと思うからです。授業者押しつけの授業になると、受け身感漂う展開になります。

(3)  本時ラストの子どもの状態をイメージします。

ゴールを明確にイメージしておくと、たとえ予想外の展開になったとしても、価値ある学びが生まれます。研究授業を出たとこ勝負の運に頼ってはいけません。

(4)  資料を用意します。

中心資料と補助資料が必要と考えています。何のために・どんな資料を・どんな媒体で・大きさ・用途等を考えて、工夫して用意します。

(5)  学習問題を設定します。

教師の発問と学習問題は別物です。活動目標と学習問題も別物です。私は、基本、学習問題を、「したい!」という子どもの願いの現れたものにするようにしています。私は、子どもの追究意欲が乗った学習問題を設定できる先生を尊敬しています。

(6)  発問・指示を吟味します。
(7)  参観者に意図が伝わりやすい本時案を書きます。

たいてい、学校の事情で書き方に縛りがあるので、思い通りにはなかなか書き機会がありませんが、工夫は心がけます。

(8)  板書計画を立てます。
(9)  模擬授業をします。

本番どおりにやります。模擬授業モドキでは、曖昧さや抜けが残ってしまうことが多いです。

(10)  もう一度、本時案を見直して書き直します。

何度も何度もこねられたうどんは、コシがあって最高の味わいです。

本時も同じだと思います。

こねてこねて、おいしい本時にするのです。

 

以上、研究授業ってどうしてる?トマリン版【Q&A】コーナーでした。

 

 

 4.トマリン今年の研究授業の様子

私は、本年度に入ってからこれまでに計10本の授業を公開をしました。

 

毎回、外部の参観者がいます。

 

参観者は、教育関係者、学生さん、大学の先生方、企業の方など様々です。

 

授業を見ていただいた後には、必ず感想をもらったり、質問を受けたりすることにしています。

 

自分と子どもの成長のためです。

 

2か月で10時間は、ちょっぴり忙しいです。

 

でも、まったく嫌だとは思いません。

 

たくさん授業をさせていただく機会があることに、毎日感謝しています。

 

私に同じく、クラスの子どもも研究授業が好きなようです。

 

5.子どもの「あゆみ」より

 

<研究授業>

 

  研究授業で、学校の先生や他の担任の先生などが、ぼくたちの見に来てくれていて、とってもドキドキしました。
  しかし、と中から、先生方がいることを忘れ、授業に集中して、考えたり発言することができたと思います。
  次、研究授業を見に来てくれた時には、最初からそうなるようにしたいです。

 

 

  伝統の 成長への道 研究授業 今日もドキドキ 楽しく歩もう

                             (トマリン感謝の一首)

泊 和寿(とまり かずひさ)

石川県金沢市立三谷小学校 教諭
私は、子どもたちが目を輝かせて生き生きと学ぶ姿が大好きです。子どもが本気になって学ぶと、グワッと教師を越えていきます。今年も、そんな感動をめざしたいと思います。

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