2013.05.29
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若い先生の良さが生きる授業とは

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

5月も終わりになってきました。

皆さん、元気にお過ごしでしょうか?

特に、若い先生達が元気であることを願います。

 

私は、今年で教員になって19年目になります。

 

今でも忘れられない授業があります。

大学を出たての初任の年に小学校4年生の社会科で行った内容です。

 

その当時、パソコンが少しずつ普及し出してきていました。

windows95が発売された後くらいの頃です。(私はマックを使っていました。)

今でいうインターネット(当時は「パソコン通信」と言われていました)も少しずつ使われ始めていました。

大学の時に少しパソコンを使っていた私は、授業の中でパソコン通信を使ってみました。

内容は「雪国の暮らし」というものです。

 

パソコン通信には、掲示板というコーナーがあり、そこには様々な質問が載せられていました。

私は、そこに雪国の暮らしについての子ども達の質問を載せてみました。

教科書では新潟県上越市の暮らしを扱っていました。

パソコン通信を使えば、もっと様々な地域の情報が集まるのではないかと思い、掲示板に質問を載せました。

その当時、そのような実践はとても珍しかったので、多くの人が反応してくれました。

子どもの質問に対して、長野、新潟、富山、鳥取、秋田、山形、北海道などから回答が寄せられました。

回答に対して、また子ども達が質問を送るというやりとりを繰り返しました。

海外からも回答がありました。

スウェーデンに住んでいる日本人の方からの回答でした。

子どもも、私もわくわくしたのを今でも覚えています。

最後には、やり取りしたたくさんの資料を全て印刷し、一冊の本にしました。

子どもにとっても、私にとっても、とても充実した学習でした。

 

そんな実践について、周りの先生はあまりよく理解できていなかったようです。

当時、パソコンも一般的でなかったですし、まして、パソコン通信も同様です。

それを教育で使うというのは、先進校が少しだけやっていたものです。

こういった実践は、若い先生だからできるものです。

その時代の最先端の機器を有効に使い、子どもの意欲を高めることに利用します。

どの時代も、子どもは、新しい機器に飛びつきます。

是非、そういった若い先生の利点を上手に使って、日々の教育の質を高めて欲しいものです。

 

ところで、若い先生は、若いからこそできる授業があるように思います。

私が紹介した「ネットワークを利用した雪国の暮らしの学習」の場合は、その当時の先端の情報機器を効果的に使いました。

情報機器は、日々進歩していっています。

若い先生は、そういったものの扱いに慣れていることが多いですし、どのように使えば、授業が良くなるのかを知っています。

だから、若い先生には、情報機器などを上手に使った授業をすることができる可能性が高いです。

これは大きな「強み」です。

「強み」は、活かしてこそ「強み」です。

 

また、若いということは、子ども達に年齢的に近いということです。

感覚的に近く、気持ちを理解しやすいということもあります。

そういった利点を学級経営や学習指導に利用できます。

ところで、「友達のような先生」という言葉があります。

これは、若い先生が、年齢の近さを使って子どもと親しくなろうとして失敗をしてしまった例だと言えます。

年齢が近いから分かってあげられることもあるのですが、だからといって、なれ合ってしまうのでは、教師としては、駄目なのです。

教師は、「良いものは良い、悪いものは悪い」と言わなければなりません。

「友達のような先生」は、それがきちんとできていないと思われます。

バランスを意識しながら、若さの「強み」を活かして欲しいです。

 

若い先生、特に初任の先生は、学校に慣れるためなどに初任研を始めとした多くの研修があります。

そういった中で、「○○をしてください。」「○○はしてはいけません。」などの指導がたくさんあります。

若い先生達は、そういった中で委縮してしまっているように感じます。

自分たちの強みである「若さ」を上手に使って、質の高い授業や学級指導をしていってほしいと思っています。

「若いからこそ」できる授業があります。

是非、自分の強みは何なのかということに目を向け、それを生かす方法を考えてください。

それまでとは、少し違った授業ができてくるかもしれません。

 

教師という仕事は、それぞれの人が工夫次第でいくらでも質を高めることのできる仕事です。

若い先生は、学級経営がうまくいかなかったり、周りの先生にいろいろと指導されたりなどで、精神的に余裕がなくなっている人も見かけます。

少しだけ心を柔らかく、少しだけ頭を柔らかくすることで、日常が変わってくることがあります。

「少しだけ」意識を変えることで、自分らしさを生かすことができるようになります。

是非、自分が楽しめるような教育実践をしてください。

若い先生に大いに期待しています。

 

 

私が作った各種の資料をアップしてあるHPがあります。

興味のある方はご覧ください。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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