2013.05.14
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「校外学習」の事前学習

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

「校外学習」が近づいてきました。
「校外学習」というのは遠足のようなものでしょうか。
今年は、富山県広域消防防災センター(四季防災館)と紙すき体験ができる
施設(八尾桂樹舎)の2か所を訪問することになりました。

四季防災館では、東日本大震災規模の地震や風速30mを越え、雨量も100mb
を越える風雨をバーチャル体験する予定です。
紙すきができる施設では、日本の和紙の製法を実体験する予定です。
これに似た施設や体験は他でも実施されているかもしれませんね。

「校外学習」に向けて、毎週水曜日の「総合的な学習の時間」を活用しまし
た。
「総合的な学習の時間」は、「変化の激しい社会に対応して、自ら課題を見
付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質
や能力を育てることなどをねらい」としています。
(参考:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sougou/main14_a2.htm

中学部と高等部の生徒が一つの部屋に集まり、合同で「校外学習」について
事前学習をしました。視覚教育部門と病弱教育部門の生徒が和気あいあいの
中で授業が進みます。

今回の「校外学習」には目的が大きく3つあります。
1つ目は、防災についてバーチャルの体験を通して「防災意識」を持つこと
です。(参考:http://shikibousaikan.jp/

2つ目は、「紙すき」体験を通して、地域の伝統や文化を知ることです。
紙すき体験は、全国的にも有名になった「越中おわら風の盆」の八尾で行い
ます。富山の売薬さんの薬を包む紙の生産が、八尾で江戸時代から盛んであ
ったことなども学習できました。
(参考:八尾桂樹舎 http://www.keijusha.com/

3つ目は、「校外」に出ることを通して、公共のマナーを学ぶことです。
3つ目の目的に関して事前学習をどのように行ったのかご紹介させていただ
きます。

「公共のマナー」の中に、「挨拶ができること」「自分でお金の管理ができ
ること」「昼食の注文をする」という要素を入れました。
学校を出発するとき、防災センターに到着したとき、防災センターを出ると
き、紙すき体験に到着したとき、紙すき体験の施設を出るとき、学校へもど
ったときの6つの場面で、挨拶の言葉を言う人をそれぞれ決めました。そし
て、実際にみんなで「行ってきます」「お願いします」「ありがとうござい
ました」「ただいま」などを礼の動作に会わせて言う練習をしました。
口頭で、挨拶が大事なのだよと説明してお終いにするのではなく、生徒に体
で理解することから始めました。何気ないことですがとても大切な事前指導
だと思います。
 

次に「お金の管理ができること」では、家庭では自分で買い物をする体験が
少ないので、実は非常に大事なことです。今回は、生徒に昼食代として1000
円渡すことにしました。一人ひとりそれぞれが食堂で食事代を支払うことと
その時に学校以外の場で人と対話する体験を期待しています。
 

最後に「昼食の注文」です。まず紙すき体験ができる近くで食堂を何軒か探
しました。そのお店で、何が食べられるかメニューと値段を電話で尋ねるこ
とをしました。
 

見知らぬ人と電話を通して話をすることに慣れていないので、非常に緊張も
する活動になりました。聞きとったことをメモするという行為も以外に難し
いことを学びました。電話をお店に掛ける前に、グループの中でお店の人に
なってもらい、電話のロールプレイをして、馴れてから代表の生徒が電話し
ました。実際に当日立ち寄った食堂で決めればいいことかもしれませんが、
電話をして、必要な情報を得ることも「しかけ」として入れました。
 

「総合的な学習の時間」を使って、本校では「校外学習」が生徒にとって大
切な学習の場になっています。そして「校外学習」に参加することで体験が
広がることも願っています。

生徒が「校外学習は良かった」という感想を期待しています。


追伸:紙すき体験は、実は私は今まで行ったことがありません。生徒がわく
わくと楽しみしている以上に引率者が実は期待しているのかもしれません。 

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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