東日本大震災から2年が経ちました。
未だに行方不明の方がいること、避難を余儀なくされている方がいることに悲しみや怒りを覚えます。
早く状況が良くなっていくことを心から願います。
ところで、私は、埼玉県の北部に住んでいます。
震災が発生してからしばらくは、屋根が壊れた家を目にしたり、食品の放射能について気にしたり、計画停電を体験したりと震災に思いをよせる機会が度々ありました。
しかし、時間が経つにつれ、徐々に震災のことを考える機会が減ってきていたように思います。
この2年間、学校において、できる限り子ども達に、地震のこと、津波のこと、原発のこと、エネルギーのことなどを話すようにしてきました。
私なりに様々な実践をしてきました。(このつれづれ日誌にもいくつかの実践を紹介させてもらっています。)
しかし、子ども達にとっても、震災は少しずつ遠いものになり出しています。
改めて、2年経ったこの時期に今回の東日本大震災について考える必要があるのだと思います。
今、小学生である子ども達は、震災を実際に体験した最後の世代になるはずです。
30年後、50年後、今、大人である人たちは、少しずつ亡くなっていってしまいます。
今の小学生が大人になり、親になった頃、その時代には、今回の震災を実体験した人は少なくなっているはずです。
その時代、若い人を中心に、暮らしのエネルギーを「原発」によって作り出したら良いのではないかという議論が起こるかもしれません。
二酸化炭素の排出などを考えると、原発の方がクリーンだと考えることもできるからです。
今の小学生は、そういった時に、体験をもとに、話すことができる最後の世代です。
日本にとって、世界にとって、とても大事な世代なのです。
実際に強い地震を体験し、原発の影響を直接的に受けた東北地方の子どもは勿論、それ以外の地域の子ども達も、直接的、間接的に震災を体験しています。
震災による「悲しみ」「苦しみ」「恐ろしさ」などを共有した人達です。
東日本大震災の体験について考えているうちに、第二次世界大戦のことが気になりました。
第二次世界大戦が終わったのは、昭和20年(1945年)です。
その時に、兵隊であったであろう人達の最も下の世代は、昭和の始めの生まれの人です。
平成25年現在の年齢では、85歳位です。
残念ながら、そういった人達が少しずつ減ってきてしまっています。
戦争の恐ろしさを実体験の中で語ることのできる人が減っていっています。
被害を受けた民間人であれば、もう少し若い世代も含まれてきます。
どちらも時間と共に減っていってしまいます。
そういった方々の本当に貴重な体験を様々な形で伝えていくことがとても大事だと思います。
私が教員になり始めの頃のクラスに、広島で被爆したという保護者がいました。
昭和20年当時、2、3歳だったそうです。
その人の世代は、原爆での被爆者の最後の世代です。
日本は、唯一の被爆国だと言われています。
「非核三原則」もあります。
しかし、今の時点から振り返ると、広島や長崎の体験を、十分、伝えきれていなかったのではないかと思います。
日本は、戦後の焼け跡から、奇跡的な経済成長を遂げたとされています。
そんな中で「効率」が優先され、とても大事なことである「核の怖さ」に本気で向き合ってこなかったのではないかと感じます。
広島や長崎の悲惨な体験を伝え、子どもに考えさせるような活動を学校を中心に、もっとしっかりとやっていたとしたら、「原子力でエネルギーを作る」という選択にはなっていなかったかもしれません。
そうであったならば、今回の東日本大震災での被害やその後の復興も今とはかなり違ったものになっていたと思われます。
以前、ニューヨークにある国連本部を訪れたことがあります。
通路の目立つ場所に広島か長崎で原爆によって壊された時計が展示されていました。
原爆が落とされた時間のまま止まっている時計です。
様々なことを見る人に訴えかけてきます。
過去は変えられません。
しかし、過去の経験から学び、未来は変えられます。
私を含め、学校関係者は、今接している子ども達は、「日本にとって、世界にとって、とても大事な世代だ」ということをしっかりと認識すべきだと思います。
今回の震災を全ての人がしっかりと受け止め、より良い未来のために努力をしていけたらと思います。
今の大人が、今の子ども達に何を伝え、何を考えさせていくかによって、大きく将来の社会が変わってきます。
未来が希望に満ちた世の中になっていることを願うばかりです。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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