2013.02.20
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東京出張の巻。

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

教材教具センソリールーム観光

 東京都立の支援学校へ行ってきました。

  東京都立の支援学校で開催された公開研究会へ参加をしてきました。この研究会への参加を決めたのは、「専門家連携が充実していること」「エビデンスベースの教育を目指していること」でした。東京都では今年度より制度が整備され、先行的に何校かに外部専門家が定期的に入り、コンサルタントしているそうです。これは、今までの教育界での動きよりも一歩踏み込んだものですし、今後このような流れになった時に本校が何をしていくのかを考えるきっかけになればとの思いでした。また、「エビデンスベース」は本校でもここ数年、アセスメントに基づいた指導、支援のあり方、学習の組み立てについての取り組みを行っていましたので、ここも大変興味のあるところでした。

 

授業公開

 自立活動ではアセスメントに基づく指導の数々を参観することができました。コミュニケーションを軸に言語機能の段階別にしっかりとねらいをもった授業が展開されていました。実にわかりやすい内容でした。また、生活単元学習では、事物にいかにして「主体性」を持って活動に参加できることができるかという明確なねらいのもとで授業が展開されていました。授業の公開設定はされていましたが、基本的にどの学級も公開していました。これは簡単なようですが、学校全体としてコンセンサスが得られていないと実現しないことですし、学校としての自力がないと不可能に近い気がします。

全体会

 主に研究の概要について説明を受けました。大変シンプルでわかりやすかったです。研究の年間日程から外部専門家が日常の研修にしっかり組み込まれていることが本校との大きな違いでした。年度当初に外部専門家による理論的な講義がしっかりなされていることだけ見ても、外部専門家連携の意義が大きいように感じました。ここを内部の人間が行うとどうしても詰め切れない部分があるように思います。これは研究部を長い間担当させていただいていた私個人の見解かもしれません。とにかく、このように恵まれた環境で研修されていることを羨ましくも思いました。

分科会

 6つの分科会ごとにポスター発表でした。それぞれの発表はチームで行われていて、主に説明をする方、実技する方、発表補助する方など実に素晴らしいチームワークで進められていました。また、どの方もプレゼンのスキルが高いことが印象的でした。これからの教員に求められているスキルの一つでもあるので、その発表スタイルからは学ぶべきものが多かったです。また、ちょっとした質問に対しても丁寧にお答えいただき、一人ひとりがしっかり実践していることが伝わる分科会となりました。

 講演は、STによる言語環境についてでした。その内容は、脳の血流量から見る発達という医療ベースの、データをもとにした支援についてという最先端のものでした。これは、私が今まで具体的に聞いたことのないもので、驚きをもって注意深く聞くことができました。現在も特別支援教育では、他領域の専門家との連携が言われていますが、現場では事例についてアドバイスをいただくというのが主な取り組みだと思います。東京都で実施されている専門家連携は、さらにその先のものであると考えます。今後、この取り組みが全国的にどのように広まっていくのか注視していこうと思いますし、北海道でも導入された場合には、積極的に連携しながら、子供たちにとってよりよい指導、支援を考えていくベースにしていきたいと考えています。

また講師助言では、今後の特別支援学校での実践へ多くの示唆がありました。こちらも脳機能の局在化、身体と言語のつながり、と理論と実践が結びついた事例の中から助言が構成されていて、大変勉強になりました。また、連携先の支援学校の次年度のビジョンが明確に示されていました。研究自体についての助言は多く聞くことができますが、その先のビジョンについてまで具体的に示されていたことからもこの専門家連携が本当に具体的に、そして効果的に機能していたことが伝わってきました。

 北海道から本州への出張はなかなかすぐに行けるものではないかもしれませんが、最新の理論や技術、実践を学ぶ貴重な機会でありますので、今後も機会があれば積極的に学びに行こうと思います。また、北海道からも発信できるぐらい指導力を高めていかなければならないと改めて感じているところです。

 

 当初の目的であった「外部専門家連携」と「エビデンスベースの教育」については、私なりに見識を深めることができました。外部専門家連携は今後各都道府県ごとで異なる動きになるかと思いますが、その効果は十分にしめされているのではと思います。また、エビデンスベースはこれからますます求められていく事項ですし、アセスメントの重要性がますます高まってくるのだと感じました。

 

後記

 出張当日は、北海道地方が大荒れで、行きの飛行機が二時間近く遅れました。出張時にあまり遅れた経験がありませんでしたので、これがけっこう疲れました。もうないだろう、と安心していた帰りの便はさらにすごいことになりました。この日も北海道は大荒れの天候。出発の時点ですでに一時間半以上の遅れ。しかも条件付きの運行。飛びはしたものの着陸寸前で回避。しばらくの上空待機の後、羽田空港にリターン。羽田に降りた時には、すでに深夜でした…。そのまま人生初の空港泊でした。翌日の便も満席続きで、夜まで時間ができたので眠い目をこすりながらポジティブに観光してきました。 

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

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