大阪での高校生の自殺のことが毎日のニュースで扱われています。
部活の顧問による体罰が原因だとされています。
約半年前には、滋賀県大津市のいじめによる中学生の自殺がニュースで伝えられました。
どちらも非常に悲しい出来事です。
本来、学校とは、子どもがよい学びをして、将来、社会の構成員の一人としての役割を果たせるようになっていくための日々を過ごしていくためのものです。
「体罰」や「いじめ」は、そういったものを台無しにしてしまいます。
ニュースで話題になるのは、自殺にまで至ったような事例です。
しかし、日本中に、自殺にまで至らないけれども、深刻で、悲しく、解決されていないような事例がたくさんあるのだと想像されます。
いくら教師が良い授業をしても、「体罰」や「いじめ」が存在するような環境であったとしたら、子どもの学びは、よい物にならないと想像されます。
私は、大学の教育心理学で習ったアメリカのマズローという学者の「欲求段階説」というものを意識して学級経営を行っています。(詳しくは前回のつれづれ日誌に書いてあるので読んでみてください。)
その理論は、「体罰」や「いじめ」があるような状況では、子どもが良い学びをすることができない理由が説明されています。
私の立場は、絶対的に体罰に反対です。
体罰まで至らないまでも「激しく叱る」ようなことにも反対です。
以前、芸をするサルやイルカを訓練している場面の映像を見たことがあります。
人間と言語でのコミュニケーションを十分にとることのできない動物たちに対しては、「飴」と「鞭」で芸を仕込んでいきます。
芸が上手にできた時には、バナナや小魚などの褒美(飴)をあげます。
芸に失敗した時には、ぶったり、けったり(鞭)をします。
ぶつことが難しいイルカに対しては、プールに電気を流すのだそうです。
失敗だということを「ぶったり・蹴ったり」、「電気を流したり」することで伝えます。
私は、子どもに対して体罰をしているような状況は、まるでサルやイルカに芸を仕込んでいるのと変わらないのではないかと思っています。
大声で叱ることなどもそうです。
良いことと悪いことを明確に示すことは、教師にとって大事な仕事の一つです。
しかし、大声で叱ったりすることで、強い刺激を与えることは、先ほど書いたサルやイルカに強い刺激を与えているのと変わらないような感じがします。
人間は、考えることができる「脳」があります。
大人も子どももその能力を存分に発揮すべきだと思います。
指導するのであれば、なぜそうすべきなのか、何が問題点なのかなどを言葉で子どもに伝えていくのです。
大人(教師や親)は、しっかりと考え、子どもが納得できるような説明の方法を探り続けます。
子どもは、大人の話から、想像力を発揮し、それまでの経験を振り返りつつ、自分にとって何をしていくことが大事なのかを考えます。
そういった人間にしかできない能力を十分に発揮し、穏やかで落ち着いた中で、よい学びができていくことが理想だと思っています。
ところで、「体罰」や「体罰に近いようなもの」は、一時的には、効果が出ることが多いです。
子どももぶたれたりするのは、嫌ですから、その場では大人の言うことに従います。
けれども、「理由を納得した」上で、行動を変えている訳ではないので、また同じような状況に陥ることが多いです。
本来「指導」とは、子どもにきちんと理解させ、行動を変容させていくことだと思っています。
体罰は、「きちんと理解させ」ないまま、一時的に行動を変えさせてしまいます。
だから、同じような状況に陥ることが多いです。
また、体罰のような刺激を、人は徐々に慣れていってしまいます。
刺激を強くしていかないと、反応しにくくなっていきます。
人間の防御本能のようなものだと思います。
大声で叱っているだけだったものが、軽く頭をたたくものになり、そのうち、頬を叩くようになり・・・。
1回ぶっていたものが、5回ぶつようになり、ぼこぼこになるまでぶつようになり・・・。
体罰や大声で叱るようなものは、教師が徐々に興奮していってしまいます。
教師のストレス発散のようなものになっている場合もあります。
本当に最悪です。
子ども達がより良い学びができるようにすることが、教師の責務です。
「体罰」とは、真反対の所にあるものです。
子どもの周りにいる大人(教師や親など)は、子どもがより良い学びができるようになるために多くのエネルギーを使いたものです。
「体罰」や「いじめ」で悲しむ子どもが減ることを願います。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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