2013.01.03
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学級経営に参考にできる先人の知恵 ~マズローの欲求段階説~

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

新年明けましておめでとうございます。

 

本年もよろしくお願いします。

 

冬休みになってから、学校に関することで、いくつかニュースがありました。

 ・先生の心の病 休職5000人

 ・小4虐待 親逮捕

よい話題は、あまりニュースにはなりにくいので、悪い話題が多くなります。

教育界は、ますます困難なことの多い時代です。

2013年は、良い年となればと思うばかりです。

 

 

ところで、今日の話題は、学級経営についてです。

私は、学級経営を行う際、アメリカの心理学者マズローが提唱した「欲求段階説」というものを参考にしています。

大学の授業の教育心理や教育史で出てくるものなので、聞いたことがある方が多いかもしれません。

 

その理論をもとに、子どもや親に対して「なぜいじめをしてはいけないのか」や「早く寝る方がよいのか」ということの説明をします。

 

マズローの欲求段階説に詳しくない方もいると思うので、少し説明をします。

 

マズローは、人の欲求には、いくつかの段階があり、下位の欲求が満たされないと、上位の欲求を求める状況にならないと説明しています。

具体的には・・。

 

 自己実現の欲求(Self-actualization) (上位)

 承認の欲求(Esteem)

 所属と愛の欲求(Social needs / Love and belonging)

 安全の欲求(Safety needs)

 生理的欲求(Physiological needs) (下位)

 

最も下位である生理的欲求が満たされることによって、上位の欲求である安全の欲求を求める状況になるとされています。

 

「生理的欲求」とは、寝る、食べる、排泄するなどです。

寝不足や朝食を食べずに学校に来ている子どもは、この段階が満たされていません。

いくら勉強をがんばろうとしても、寝不足の子どもは、授業中に居眠りをしてしまいますし、おなかが空いた子どもは給食がとても気になります。

どちらも学習の質が低下します。

 

次の「安全の欲求」とは、けがをしない、いじめられないなどの問題です。

もし子どもがクラスでいじめられているとしたら、そういったことが気になり、勉強どころではなくなります。

授業中は教師の目があるので、ある程度安全ですが、休み時間になるといじめられるというケースを聞くことがあります。

そういった場合、いじめられている子どもは、休み時間になったらどうしたら身の安全を守ることができるかということを授業中に考えていたりします。

もちろん、学習の質は低下します。

 

「生理的欲求」と「安全の欲求の関係」についての具体的な例を少しお示しします。

マンモスがいた時代、人は食べ物を得るために、危険を冒しても、マンモスを捕らえに行きました。

危険を承知し、死を覚悟しながらも、生理的欲求である食欲を満たすために狩りに出て行ったのです。

これは、安全の欲求よりも生理的欲求の方が先に満たされなければならない一例です。

 

「朝ごはんを食べてくること」、「睡眠時間をしっかりと確保すること」などは、学習の質を良いものにするためにとても大事なことです。

学級集団において、いじめや友達間のトラブルなどがないことも大切なことです。

日々の学びの質を高めるためには、そういったことへ十分配慮をすることが担任には求められます。

私は、4月になりクラスが新しくなったら、欲求段階説のことを子ども達に話します。

「なぜ、しっかりと寝る必要があるのか?」「なぜ、朝ごはんをしっかりと食べる必要があるのか?」「学習の質を高めるために、友達同士でのトラブルをなくした方がよいのか?」などを図を示しながら説明をします。

4月の懇談会でも保護者に対して、同様の話をします。

人は、理屈で納得ができたものは、その通りに行動することができます。

 

是非、子ども達に、「どうしてそうしなければならないのか」ということを少し丁寧に説明してみてください。

子どもの行動が変わってくるかもしれません。

 

 

※マズローの欲求段階説を題材にした授業を行った時の資料などを私のHPにアップしてあります。

 他にも授業で使えるような自作の資料があります。

 興味のある方はご覧ください。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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