こちらでは、何回かご紹介している「たすくスケジュール」ですが、現在も学級のお子さんへ継続して活用しています。今年もそろそろ終わる頃に一度整理しておきたいと考えていましたので、相変わらずまとまりのないものですが、お付き合いいただければと思います。
春先に、一枚、二枚のアナログのスケジュールから取り組みを始めたお子さんが、現在は「たすくスケジュール」で自分の一日の活動をチェックして見通しを持ち、安定した生活を送れる日々が増えてきました。
スケジュールでの支援にはおおまかなねらいがいくつかあります。指示に応じることは基本かとは思いますが、活動を選択したり、自分の役割を意識したり他者に配慮した計画などもねらいになります。また、お子さん一人ひとりに応じた細かなステップがあります。今年度は、小1を担当させていただいていますので、そのステップの移り変わりを感じながら、指導・支援を進めています。
春先に一枚の少し大きめの絵・写真カードからスタートしたお子さんは、次に二枚の絵カードのスケジュールに移行しました。活動から活動へのつながりを意識し始めるようになり、活動の終わりと次の活動への切り替えができるようになりました。さらに、個別学習での取り組みやご家庭での取り組みなどから平仮名の獲得がありましたので、この段階でスケジュールにも平仮名が登場しました。しかし、まだ画像、イラストの処理が優位だったので、画像やイラストを中核にして平仮名を添えるという形の絵カードでした。このあたりから生活場面での活動の広がりが見られてきて、スケジュールに使用するカードもどんどん増えました。
この時期に「たすくスケジュール」を用いた個別の課題学習をスタートしました。
一日のスケジュール確認はアナログでわかりやすく、個別の課題学習では、手順などを示したりもしながら活動をよりわかりやすく提示することに気をつけました。個別の課題学習では、ゆくゆくは自分でスケジュールを操作しながら自分の活動を確認し、自分で活動することができるようになればと思い、具体的で見通しが持ちやすい課題学習から取り組むとしました。このお子さんにはこの方向が有効でした。今では、自分でサクサクと「たすくスケジュール」を操作しながら、自立的に個別の課題学習に取り組む様子が見られています。
そのような、お子さんの成長する様子を保護者の方に見ていただき、いまはご家庭でも「たすくスケジュール」によるスケジュールの確認を行っていただいています。また、学年内でグループ学習をする時などは、私と共に活動をしない時でも他の教員が「たすくスケジュール」でスケジュールを組み立てて提示をしています。いま、このお子さんを取り巻く環境の中では、非常に統一感のある支援ができているのではないかと見ています。
このあたりはアナログではなく、デジタルの持つ良さだなと再認識しているところです。どこにいても同じ形の支援を受けることができる、ということは、とりわけ自閉症のお子さんたちにとってはわかりやすく、必要な形なんだと私は考えています。そのためにデジタルツールを用いることの有効性はやはり確実にあるのだなと思います。
さらにこの「たすくスケジュール」アプリに特化してその有効性をお話すると、視覚的な情報だけではなく、聴覚的な情報も同時に入力されるように設計されています。絵カード一枚一枚に対して、音声録音できるようになっていますので、身近な人の声でスケジュールが読み上げられます。これは、ワーキングメモリーで情報が処理される際に、視覚+聴覚の情報が統合されて記憶されていきますので、どちらか一方の情報よりもより強く記憶されるという効果を生み出します。さらには、タッチ画面を操作することによりスケジュールを確認しますので、「動作・操作を伴う学習が得意」なお子さんたちにとって、より学習効果が上がっているのではないかと推測されます。
簡単なまとめではありますが、最初からデジタルツールで取り組むのは難しくても、アナログで経験を積み重ねて、デジタルに移行していくことは、スケジュールに限らず、今後の生活で就労や余暇を考えるともはや必須のような感じさえもっています。
とは言え、価格の問題があったり、電源の問題があったり、破損の問題があったりと決して万能なわけではありません。ですから、使用、活用するには十分に検討が必要なわけですが、目の前で成長しているお子さんたちの様子を見ていると、このツールはやはり必要だなと個人的には感じずにはいられないです。
これで今年の私のアップは最後になります。年末のお忙しい時期にお読みいただきありがとうございます。お読みいただいている皆さんには、また来年もしばしお付き合いいただき、ご指導いただければと思います。
みなさん、よいお年を。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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