2012.12.10
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

学習の振り返りに。

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

 学習の振り返りにiPhoneやiPod touchのカメラを活用しています。

 私の学級では、他の学級での実践を参考にさせていただきながら、今年度の帰りの会で一日の振り返りに写真を多く活用しています。これは、子ども達の一日のまとめとしてとても大きな効果があると実感しています。記憶の保持や記憶の呼び起こしに課題のあるお子さんたちにとって、聴覚的な情報に加えて視覚的な情報を提示することで記憶にアクセスするのが容易になっていると思います。全てとは言えませんが、私の担当しているお子さんたちにとってはその反応の違いは大きく異なります。そのような実践を積み重ねながら、今回は学部全体の研究についても少し触れています。

 今年度の本校小学部の研究テーマの一つに授業の評価改善があります。実際の授業の中で児童の学習を振り返る場面で、視覚的に振り返ることの実践が各学年の授業で繰り返し行われ、その有効性が確認されつつあります。まだ、具体的な数値や文言でまとめられていませんが、次回の学習へつなぐという視点で考えても効果があるようです。

 私の担当する学年のある授業では、3つのグループに分かれて、4つのコーナーをめぐり学習しています。一人ひとりの児童の特性や実態、目標に応じてグループを構成しています。学年全体で集まるのは、授業の導入とまとめだけで、その他はグループで活動します。学習形態としては、グループのみで始まりから終わりまで完結するという方法もありますが、今回はより多くの人に認め、賞賛されることで学習効果を高めていきたいとの思いもあり、特に振り返り、まとめの時間は全員で行っています。そこでは、各グループでの学習の様子が次々に映し出され、多くの友達や教員から頑張っていることが認められ、賞賛される機会となっています。

 この内容だけですと、デジカメを活用するのとメリットに大差はないように思えます。しかし、各教員の個人持ちのデジカメを多く利用している現状では、ここにやはり差が出てしまいます。アダプタや接続方法の違いにより、各グループの写真を提示する度にタイムラグが発生してしまうのです。同じ機種を利用する場合は、ここまでのデメリットはないのかもしれません。

 そこで、私の担当する学年では、iOSの端末を活用することにしました。これもまた教員の個人持ちである現状には変わりないのですが、とにかく全て同じアダプタで接続でき、同じ操作で動作させることができるというのは大きなメリットです。授業の導入でもメインの教員がiPadを用いて、スケジュールの確認やコーナーの内容確認を行っていますので、授業の始まりから終わりまで一つのアダプタで同じ動作をすることができるのです。

これが今回iOS端末を用いた最大の理由かもしれません。もちろん、学習の振り返りの効果を高めるために視覚的な情報を、という最大のねらいはあります。そのねらいを達成するためにはカメラ機能のある機器であればどのようなものでもよいのかもしれません。しかし、ある程度の規模の学習集団ですと、子ども達を待たせてしまう、言い換えると思考を止めてしまうような時間を作らないことは、学習を構成する時に、学習を支える機器をセレクトする上で一つの視点になるかと思います。そう考えると今回のような学習形態では、iOS端末を活用したことがベターな選択だったのではないかなと思います。

 理想的には、通信環境も整っていて、瞬時に情報を統合できるとすごくいいなと考えますが、それはインフラ整備や個人情報の関係などいろいろな課題があり、まだまだ先になるように思います。もしくは、学校現場では、そこまで到達しないのかもしれませんね。これは今後の実践の積み重ねでどのような成果が上げられるかにも左右されることなのでしょうか。

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

同じテーマの執筆者
  • 樋口 万太郎

    京都教育大学付属桃山小学校

  • 石丸 貴史

    福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任

  • 吉田 博子

    東京都立白鷺特別支援学校 中学部 教諭・自閉症スペクトラム支援士・早稲田大学大学院 教育学研究科 修士課程2年

  • 綿引 清勝

    東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)

  • 岩本 昌明

    富山県立富山視覚総合支援学校 教諭

  • 増田 謙太郎

    東京学芸大学教職大学院 准教授

  • 植竹 安彦

    東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士

  • 渡部 起史

    福島県立あぶくま養護学校 教諭

  • 中原 正治

    元徳島県立新野高等学校 教諭

  • 川上 康則

    東京都立港特別支援学校 教諭

  • 鷺嶋 優一

    栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭

  • 中川 宣子

    京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 大吉 慎太郎

    大阪市立放出小学校 教諭

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

  • 清水 智

    長野県公立小学校非常勤講師

  • 齋藤 大樹

    浦安市立美浜北小学校 教諭

  • 丸山 裕也

    信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭

  • 下條 綾乃

    在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師

  • 宮澤 大陸

    東京都東大和市立第八小学校

  • 渡邊 満昭

    静岡市立中島小学校教諭・公認心理師

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop