移動教室へ行ってきました。
特別支援学校の宿泊学習では、養護教諭と医師も同行していきます。それだけ、医療との連携が欠かせない子どもたちが多いからです。
家庭から離れて生活する機会が少ない児童・生徒たちですので、緊張した表情で出発した児童もいましたが、友達との関わりを通していつの間にか笑顔が溢れていました。教員にとり行事の準備は楽ではありませんが、子どもたちが一人で生活する経験を通して、少し大人になったような表情を見せてくれると、行って良かったなと思う瞬間です。
教員集団も学校行事を通し、一つの目標に向かい行動することで、教員間の距離も近づき組織力が高まるように感じます。大変だからこそ、力を合わせてやってみることが大切ですね。
さて、今回も「姿勢と学習」についてお話していきたいと思います。
本校には自分一人で座位姿勢を取り続けることが難しい児童・生徒が多数います。学習時には、「座位保持いす」と呼ばれる姿勢を安定させて座ることができる特別な椅子を使って学習しています。
このイスには、腰を止めるベルトと、胸を支えるベルトがついており、体幹を支えられるようになっています。
私たち教員も、一人で座位が保てないのだから、授業の際は当たり前のようにこの座位保持いすに座らせてしまいますが、発達的視点から「座位を保つ(上半身を起こし、背筋の伸びたきれいな姿勢)」意味を確認したいと思います。
生まれたばかりの赤ちゃんが座位をとれるようになるのはいつぐらいでしょうか?ちょっと考えてみてください。子育ての経験のある方は思いだしてみてください。
座位は、大人に座らせられて座位姿勢がとれる段階から、うつ伏せから自分で座位姿勢まで姿勢変換をさせて座れる自力座位の段階など違いはあります。それでもおよそ、生後6ヶ月から8ヶ月くらいで座位がとれるようになります。
座位ができる前は、仰向けやうつ伏せの状態からしか周りの様子を見ることができません。一瞬手に触れたものを触ったり握ったりし、そこへ視線を移すことで精一杯です。
続いて、両手を地面について、なんとか身体を支えて座位を取れるようになると、今まで床の位置から外界を見ていたものが、今度は高い位置から首を左右に向けたりすることで広範囲に渡って見渡せるようになります。でもバランスを崩すとまだ転がってしまう時期です。
さらに、体幹がぐらついても、自分でバランスをとり、倒れないようにできるようになると、これまで身体が倒れないように使っていた両手が自由に動かせるようになります。座ったままの姿勢でおもちゃを持って遊んだり、取ってのついた哺乳瓶型のコップを自分で持って飲んだりできるようになります。
このように、体幹が安定するからこそ我々は、自由に見たり、聞こえてきた方向へ顔を向けて確認したり、さらには手を使って学習することができるのです。
このような様々な学習するのに必要な要素を備えるために、肢体不自由特別支援学校の児童・生徒は「座位保持イス」という便利な椅子を座って学習しているのです。
いかがでしょうか?当たり前のように座って活動できる私たちですが、座れることに大きな意味があるのです。
また、座る姿勢のポイントです。
肢体不自由特別支援学校では、自力で座位を保てない児童・生徒を車いすや座位保持いすに座らせる際に、骨盤が起きた状態で座ることを大切にしています。骨盤が後ろに倒れた状態だと、背中が後ろに飛び出し猫背の姿勢になり、今度は顎が前へ飛び出して上目づかいにしか黒板など外界を見ることができなくなるからです。
もう一点は足が地面にしっかりついていることです。足が地面に着くことで座位が安定し活動する方向へすぐに上半身も対応させて動けるからです。ぜひこの視点から教室で学ぶ子どもたちの姿勢を振り返ってみてください。
では、普通の小中学校の児童・生徒はどうでしょうか?姿勢が保ち続けられず、机にもたれかかりながら授業を受けている子もいませんか?
次回は、もう少しこの姿勢のメカニズムについてお話していきたいと思います。
いよいよ先生も走ってしまう師走ですね。忙しいこの時期だからこそ、子どもたちの健康を保つためにも、自分が風邪をひかないように気をつけたいと思います。みなさんもお身体大切になさってくださいね。
植竹 安彦(うえたけ やすひこ)
東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士
肢体不自由教育からの視点を中心に、子どもたちの発達を支えるために日々できることを一緒に考えていきたいと思います。
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