11月に入り、文化祭や宿泊行事など、授業づくりと並行して学校行事の準備にも追われるころではないでしょうか?私も、今週は移動教室が控えており、宿泊先やボランティアさんなど、打ち合わせや連絡に追われながらのつれづれ日誌です。
さて、今回から数回「姿勢と学習」について日頃意識していることをお話ししていきたいと思います。
私の勤務する学校は、肢体不自由特別支援学校といい、車椅子に乗り、スクールバスで通ってくる児童・生徒が大半の学校です。
朝は、スクールバス乗り場に担当児童を迎えに行くことから始まります。バスの昇降機を使って降りてくる児童に「おはようございます」の言葉をかけつつ、いくつかの視点から児童の様子を見ています。
それは、顔色や、挨拶への反応の様子などと共に、どのような姿勢で車椅子に乗ってきたかを見ています。首や肩周りに力が入り、肩が上がっている時は、何か緊張しているのかな?とか、疲れがたまってきているのかな?など、その日の姿勢を表している原因をさぐるようにしています。
また、背筋が伸び、バスを降りる前から先生を探すようなしぐさが見られる時は、何か報告したいような楽しい出来事があったのかな?など想像し、「楽しいことでもあったの?」と質問してあげるようにします。心が外へ向かっている時は、子どもの心を受け止めつつ、さらに興味や関心を広げるチャンスですので、見逃したくないしぐさです。
この後、教室に行き、連絡帳や児童との会話から家庭での出来事などを把握し、子どもたちの内面世界がどのようになっていそうか考えるようにしています。
そして、子どもの状態から読み取った情報を基に、学習に適した身体と覚醒状態にもっていけるように、朝の関わり方を工夫していきます。
例えば、肩周りに力が入っていると、作業を伴う活動がやり辛くなってしまうだけではなく、深く呼吸ができないので疲れやすくなってしまう原因にもなります。
そこで、肩の上げ下げや、首から肩へ向かってさするなどして、リラックスした状態にします。
眠そうな子や身体が傾き加減な子には、昨日のテレビの話をして笑いから覚醒を高めたり、バランスボールに乗せ、揺れ遊びをしたりして運動から覚醒を高めたりしています。
逆に、覚醒が高すぎて、筋緊張が強くなってしまっている子もいますので、リラックスした曲をかけながら、力の入りすぎている筋肉に手のひらを当て、筋肉が弛緩するように促すこともあります。
特別支援学校には、言葉で自分の内面世界を伝えられない子どもたちもいます。でも、言葉では表出していなくても、姿勢や眼差し、ふとしたしぐさから心の内を表していることもしばしばです。この情報を取り入れ、指導に活かすことで学びに適した姿勢づくりができると思っています。
小学校3、4年生くらいまでの学習は、自分を通して外界に関わり、実体験から学びを積み上げていくことがとても多くあります。
その際、姿勢が良いことで、視空間概念の育ちも良くなり、得られる情報がグッと増えていきます。
きっと、通常の小中学校でも、眠そうに首が少し傾いて登校してくる児童・生徒や、うつむき加減の子、テンション高く「先生、先生」と走り寄ってくる子など様々な子がいるのではないでしょうか。
一人の子どもと会話ができる時間は限られるでしょうか、姿勢やしぐさから気付いてあげられることは多々あると思います。
そんな気付きから、子どもに寄り添い、子どもの内面を支えてあげられるようにしていきたいです。
次回も姿勢と学習について、少し違った視点からお話ししていきたいと思います。
それでは、移動教室行ってきまぁす。
植竹 安彦(うえたけ やすひこ)
東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士
肢体不自由教育からの視点を中心に、子どもたちの発達を支えるために日々できることを一緒に考えていきたいと思います。
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