今回はノーマル編です。
【1】CDを聞いて、一緒に歌う。
かけざん九九にメロディーを付けたり、「ごいちはご、はい!」と復唱を促すような曲があります。私は、授業の導入で1回は流すようにしています。音楽は、リラックスや楽しい気持ちにさせることができます。やはり授業は楽しい雰囲気で始められた方がいいですものね。
特に聴覚優位の子、継次処理が強い子、歌をすぐ覚えるようなタイプの子には、有効と考えられます。
【2】フラッシュカード
1枚にひとつのかけざんの式が書いてある「かけざんカード」を使います。なるべくパッと見ただけで「ごいちはご!」と言えるようにします。全員で声をそろえて言ったり、ひとりひとり言ったり、子ども同士で問題を出しっこしたり・・・いろいろとアレンジできます。問題の出しっこをするのもいいです。授業の中で子どもが生き生きと活動できるので、メリハリもつきます。
特に視覚優位の子には有効なことが多いのではと思います。
【3】ノートに書く
かけざん九九をノートに視写します。黒板に書いてあるものを写す、プリントに書いてあるものを写す、思い出して書くなど、これもアレンジができます。「書いて覚える」感覚は、漢字の書き取りと同じようなものです。また、ノートに書くという作業は、これから先の学習でノートに書くときの基礎づくりに使えると思います。マス目や縦列・横列をしっかり揃えて書くように指導することが大事です。これを継続的に行うことで、プランニングや短期記憶が弱い子へのトレーニングともなります。
【4】「たしざんの式」と「かけざんの式」のマッチング
「2+2+2=6」と「2×3=6」は同じということを、カードのマッチングで理解する方法です。いくつかの選択肢を用意したり、カルタのようにして見つけられるようにするとよいでしょう。
視覚優位の子、同時処理タイプの子に有効です。
「個に応じた」という視点でいろいろ挙げてみました。
今回挙げたのは、特に目新しいわけでもなく、ごく一般的なかけざん九九の覚え方集です。
肝心なことは、どれかひとつのやり方にこだわらないこと。
よくありがちなのは、教師自身の認知スタイルに合った指導法が「一番だ!」と錯覚してしまうことです。
例えば、教師が視覚優位だった場合。「自分もノートに書いて九九を覚えたから、きっと子どもたちもノートに書けば覚えられるはずだ」と思ってしまうようなことがあります。
字を書くのが苦手な子が、この先生のクラスにいた場合、どうなるでしょう?・・・不幸なことですね。違うやり方だったらできたはずのことができなくて、その結果「自分は算数ができないんだ・・・」と。
ちょっと話が飛躍しますが、著名人がよく「自分も昔、こうだったから」という理由で教育論を展開することがありますが、それは全てのみんなに当てはまる公式ではないと思うのです。「私は学校で勉強しなかったけど、ノーベル賞を取ることができた。」って、それは全てのみんなには当てはまらないでしょう? それと一緒です。
「個に応じた」指導法を考えるためには、自分の認知スタイルとは別な認知スタイルがあるということを、まず理解しないといけないと思います。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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