ディスプレイの大きさは関係あるの?
11期からの流れでICT機器についてまだまだ考察していこうと思います。今回も徒然なるままに、ですが。
今日は、ディスプレイの話です。
現在発売されているタブレットのディスプレイにはさまざまな大きさがあります。いまの主流は7インチですね!?
一般の人々がタブレットを購入する時は、ディスプレイは決定的な要素ではなく、メーカーや価格、重さ軽さ、壊れにくさ、アプリの数等々と並んで比較検討項目の一つであり、その項目に占めるディスプレイの割合はそれほど大きくはないかもしれません。
そんな中で、指導に活かすためにディスプレイをいろいろな視点で検討してみることも必要なことかなと最近考えています。以前は、10インチ前後のものが多かったのでそこにあまり選択するという発想はなかったのですが、ここ最近でタブレット端末もいろいろな大きさが出てきて、さらにはスマートフォンが大型化してきていることなどもあり、これから子供たちの指導で使用する場合に子供たちの特性により合わせたものをセレクトしていけるのではないだろうか、と考えたわけです。
いわゆる典型的な発達の子供たちであれば、10インチでも7インチでもそれほど大差はないのかもしれません。小さすぎて見えないことや大きすぎて対象物が把握できないなどよほどのことがないかぎり3インチの差は選択を左右するほどではないかもしれません。むしろ、小さくて持ち運びやすい、というモバイル特有の特性の方が優先順位の上位にきそうです。
しかし、いわゆる発達に凸凹のある子供たちにとっては、タブレットを扱う時にディスプレイの大きさは違いがあるように思います。これは障がいだから、という大きなカテゴリーの話ではなくて、子ども一人ひとりのとらえ方によって違いがありそうです。視点としては自閉症教育の7つのキーポイントから「注視物の選択」「学習態勢」が考えられます。
「注視物の選択」の下位項目では、「目の前に示された物を注視したり、注目したりすることができる」があります。この項目で考えると、小さい画面の中のものに注目する方が容易かもしれません。そこからスタートし、繰り返し学習する中で、注視したり注目できるものを増やしながら大きさを変えていくのは有効な手段の一つになるかと思います。子供によってはフォーカスできる範囲がすごく狭い場合もありますから、その場合はさらに画面サイズの小さいスマートフォンの活用も検討していく必要があるかもしれません。また、「学習態勢」の下位項目では、「同じ姿勢で机上の課題を見ることができる」というものがあります。これは「注視物の選択」と連動する部分が大きいと私は考えています。やはり、見やすいもの、そして興味のあるものがあることで学習態勢を整えられることが多いように感じています。ただし、7つのキーポイントは、「学習を支える学び」として位置づけられているものですから、ここを整え、高めていく上で学校教育でいうカリキュラム、教科教育の部分を学ぶ土台ができあがっていくものです。
実際に、私が机上学習で指導する場合は、一つの基準としてA4サイズを考えていました。教材もおおむねこのサイズを基準にして作成していました。このサイズが子供たちがものをとらえる時にちょうどいいのでは考えていたからです。ですが、この、ディスプレイサイズを考え始めた時に、もっと見え方にはいろいろとあり、小さい方が見えやすかったり、理解しやすかったりすることもあるのではないだろうかと改めて気づかされました。それは、iPadとiPod touchの二つの端末で、同じアプリを用いての指導を比較した時に、アプリの内容によっては、小さい画面の方がよくとらえられているのではないか、と思える子供の姿があったからです。その姿から子供によって使い分けて提示をした方が、より教育効果が高いのではないだろうかと考えるようになりました。
また、別な視点としてビジョントレーニングが考えられます。眼球運動の苦手なお子さんだと小さな画面の枠の中で動くものをとらえた方がとらえやすいでしょう。さらに、トレーニングとして考える場合は、少し広い画面で上下左右に動くものをとらえるなども考えられるでしょう。ビジョントレーニングの視点は私もまだまだ勉強中ですので、また学びを進めて、自分の視点として持てるようになれれば、と思っています。
(ビジョントレーニングについて詳しく知りたい方はこちら http://www.joyvision.biz/index.html)。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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