2012.10.23
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「ゆるキャラ」の教育的価値

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

 

先日、私が通勤で使っている学校の最寄りの駅で深谷市のゆるキャラ「ふっかちゃん」を見かけました。

このゆるキャラは、3年ほど前に、いくつかの案の中から、市内の子ども達の投票で決まったものです。

 

現在、ちょうど「ゆるキャラグランプリ2012」をやっています。

ふっかちゃんは、約750人(匹?体?)中、10月19日現在、第4位です。

 

ふっかちゃんのようなこういったいわゆる「ゆるキャラ」は、教育的価値が豊富です。

様々な教科の学習に用いることができます。

 

まず、ゆるキャラは、社会の地域理解の学習に好都合です。

多くのゆるキャラが、地域の特産品や特色を生かした姿をしています。

ふっかちゃんの場合、つのがネギでできています。

深谷市は「深谷ねぎ」が特産品です。

服をとめるボタンの部分は市の花のチューリップになっています。

日本中のゆるキャラを見ていくと、それぞれの地域の特産品などがよく分かります。

地図帳を広げて、現在、行われているゆるキャラグランプリに参加しているゆるキャラを順に見ていきます。

意外な発見もあります。

あっという間に時間がたってしまいます。

 

ゆるキャラは、社会科以外にも、学習に用いることができます。

それは、道徳の「郷土を愛する心情」についてです。

文部科学省が定めている学習指導要領の道徳編には、次の様に書かれています。

1.2年 郷土の文化や生活に親しみ,愛着をもつ。

3.4年 郷土の伝統と文化を大切にし,郷土を愛する心をもつ。

    我が国の伝統と文化に親しみ,国を愛する心をもつとともに,外国の人々や文化に関心をもつ。

5.6年 郷土や我が国の伝統と文化を大切にし,先人の努力を知り,郷土や国を愛する心をもつ。

    外国の人々や文化を大切にする心をもち,日本人としての自覚をもって世界の人々と親善に努める。

「郷土を愛する心情」についての難しい部分は、別として、ゆるキャラは「郷土を愛する心情」を育む際に、非常に使いやすいものです。

現在、市町村、都道府県などには、様々なゆるキャラが作られています。

そういったものに対して、子どもは違和感なく好意を持つことができます。

小学生に、「自分の住んでいる市を好きになりなさい!」と言ったとしても少し無理があります。

しかし、ゆるキャラを使いながら、自分の住んでいる市に好感を抱いていくということならば無理がありません。

そういったことの積み重ねが「郷土を愛する心情」につながっていくのだと思います。

 

今回、授業を行うに当たって、授業前と後で様々なアンケート行いました。

アンケート内容

・自分が住んでいる市が好きか

・自分が住んでいる市のことを詳しいか

・自分が住んでいる県が好きか

・自分が住んでいる県のことを詳しいか

・日本が好きか

・日本のことを詳しいか

・自分の市のゆるキャラが好きか

・社会の授業が好きか

 

ゆるキャラを使った社会の授業の前後では、ほとんどの項目で好意的な変化がありました。

特に、知識に関する部分での変化が大きかったです。

ゆるキャラは、地域の特産物などが体のパーツに使われていることが多いです。

そういったものを紹介しながら、地図帳を使って、学習を進めました。

多くの子どもが、市、県、日本について詳しくなったととらえています。

 

今回の学習では、学力下位の子ども達が非常に意欲的でした。

学力下位の子どもは、テレビゲームやカードゲームが好きなことが多いです。

そういったゲームとゆるキャラで共通する部分があるからでしょう。

 

最後に子ども達の感想を載せておきます。

 

・ぼくは、ゆるキャラの学習をして、こういうおもしろいゆるキャラは市には、いなくてはならないなという印象を強く感じた。

・ほとんどのゆるキャラは、その県や市の特産物が、名前や体の一部などに入っていて、楽しみながら、そこの特産物を覚えられました。

・最初、私は社会がきらいでした。でも、この学習をしてから、社会が好きになりました。もっと色々なことが知りたいと思いました。

・ふっかちゃん(子ども達が住んでいる市のゆるキャラ)は4位なので、少しくやしいです。でも、まだゆるキャラグランプリをやっているので、ふっかちゃんが1位になることを願いたいです。

 

様々な学びのある「ゆるキャラ」です。

 

授業で使ったパワーポイントのデータが私のHPにあります。

興味のある方は、ご覧ください。

※ただし、ちょっと「ふっかちゃん」ひいきですが・・・

 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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