2012.10.10
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「コチョコチョ」と「肌色」の英語など

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

パート1
A子が、目をキラキラさせて、私に尋ねてきた。
「先生コチョコチョって英語で何というのですか」
(本当は富山弁で質問してきているのですが)

私は、「うっ」となってしまった。以前の「電源周波数が変わる?-夏の思い出」 (9月12日号)での「慣性」の時と同様に
恥ずかしながら分からないのだ。「調べておくね。」と言わなくてはならないバツの悪さ、おわかりでしょうか。

授業とは直接関係ない唐突な質問であるが、笑顔を維持して
「うーん、良い質問だね。後で調べてみるから。
また、色々質問待っているよ。」とお茶を濁してしまった。
(正解は最後にあります。)

その後、休み時間になると英語で隣のB子がS子にコチョコチョの悪戯(いたづら)をしながら、英語を使ってもうすっかり自分のものにしてしまった。彼女の逞しさに脱帽である。

まず、A子のように、「○○って英語でなんというのかなあ」
と言葉に興味を持ち、知りたいという欲求は非常に大切な意欲の一つである。
つぎに、学んだことを、実際の場面で使ってみるこで定着が進むという例をA子から奇しくも教えてもらうことになった。
 

私自身の反省としては、ネイティブが幼少期に用いているような語彙や知識が全く欠落していることに気付かされることになった。


パート2
10月に入って校舎の屋上の雨漏り対策の工事が始まった。屋上の外壁部分が連日研磨機とドリルよる物凄い騒音の中で授業を行っている(この原稿が読まれている頃には終わっていてほしいが)。
私は、「とにかく五月蠅(うるさ)くても、逆境でも我慢も必要かと、いや慣れれば何とかなるかもしれない。」と思った。 
 

音に敏感な生徒らの中には、意外なことに、この工事の音が新鮮に聴こえ嬉しく感じるようだ。工事のガタガタ、ギュルルン(ちょっと擬態語がうまく皆さんに伝わるか不安ですが)等が、何か別の乗り物や身近な別の金属の音に似ているというのだ。彼らの音に対する関心の高さと想像力豊かさや度量の広さには脱帽させられたのである。


パート3
パート2で触れた騒音に加え、困っている生徒が出てきた。私には体感できないのだが、工事のドリルや研磨から起きる、僅かな校舎の揺れ、振動が一部の生徒には不安感を募らせるようだ。
工事の音でなく振動で落ち着かず顔色が悪くなるのである。体感が敏感な生徒がいるのだ。視覚の障害特性として配慮すべき事項の一つかもしれない。幸いかな鈍感な私には全く振動や揺れとして伝わらず気にもしないのです。


パート4
職員室で、パート3で困っている生徒について教師間で話題になった。生徒の学習環境を考えて、空き教室を状況に応じで臨機応変に使用することが許されることになった。それは良いことだと私は思った。あるC先生が、ところで「ガタガタって英語で何と言うのですか」と、ボソッと口にされた。私は「うーん。なんていうのだろうか」頭を抱える間もなく、ネットで検索した(和英辞典でなく)。
 

私の周辺で、「英語でどう言うのか」と尋ねる人が増えてきたようだ。英語教師としては、何でも知っている訳でないので、いつも冷や汗もので、針の筵(むしろ)にいるような気持ち半分、未知への関心が半分である。(解答例は最後にあります)


パート5
D子が、「先生肌色って英語でなんていうの」と尋ねてきた。
生徒の中には、授業と全く関係なく、思いついた時に、TPOをわきまえずこのような問いを口にする場合がある。パート1同様に、まず、質問してくれたことはとりあえず評価して、それに時間を取られないように気を付ける。
机の上に、最近買ってもらった電子辞書を持っているD子とE子に、和英辞典機能を使って調べるように促した。
するとD子が「フレッシュ カラー」だと読み上げた。
 

私は「えっ?fresh color???新鮮な色?」と咄嗟(とっさ)に思った。
「そー英語で言うのかな?」と半信半疑ながら、一人合点しようとしていました。
でも、腑に落ちないので、スペルはどうなのかをE子に尋ねてみました。すると、f-l-e-s-h colorとのこと。
 

「肉色?」これは凄い英単語だな。
でも、同時に私は、「これって何か変だな」と感じました。
「肌色」という単語は本当は存在しないのではないだろうか。
日本人は、単一民族で肌の色が同じ(本当は異なるのかも)という発想から生まれた色の言い方ではないか。
 

幾つかの検索でサイト巡りをしてみると分かったことがある。
1.英語のflesh colorは白色人種の肌の色で、厳密には日本人の肌の色を指すものではないようだ。
2.人種差別への問題意識から、人種や様々な要因で肌の色は一つではないのに、特定の色を「肌色」と称することを避ける傾向が出てきた。薄橙(うすだいだい)・ペールオレンジ(pale orange)等と言い換えて、現在はこの名称がもちいられていないとのこと。
(参考:wikipedia 「肌色」)
3.ペンテル他画材メーカー各社が国際先住者年にUNの勧告により肌色からこの英語の呼び方のpale orangeに切り替わった。

 
興味を持たれた方は、次のサイトなどを当たって調べてみることも良いかもしれません。どうぞ。
(参考:日本で言う「肌色」って、外国語では?
http://okwave.jp/qa/q96542.html
(参考:肌色 flesh color)


最近の私は、生徒や周りの方からの質問に翻弄されつつも、良い緊張感をもって「目から鱗状態」で充実しております。


[正解例(他の答えもあり得ると思います)]
パート1「コチョコチョ」はcoochy-coo; hitchy-koo; kitchy-koo (tickling sound)
パート4「ガタガタ」はrattle、judderなどかも

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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