今回は、私がこれまで作った中でも、特にピンポイントにヒットした教材をご紹介します。
写真の教材、その名も「萌えひらがな」です。対象児は、特別支援学級においてひらがなを学習中の1年生の「女の子」です。
見ていただいてなんとなくわかるかと思いますが、薄いピンク、薄い水色、薄いオレンジと、なぞる文字の配色を、「萌え」っぽくしただけです。
なんとこれだけで、これまでひらがなの学習をそんなにやる気のなかった子どもが、俄然やる気を出してくれました。この女の子には、「萌え」っぽい感じが、ピンポイントにヒットしたわけです。
また、なるべく聴覚的な情報からも文字を認知できるように、音でひらがなの書き順を表しました。
「ひ」なら、「よこ、そのままななめー、ぐるーっ、すとん」。
「ふ」なら、「ちょん、ちょーん、ちょん、ちょん」みたいに(笑)。
よく知られていることですが、文字を書くのが苦手な子どもにとって、同じ文字を繰り返し書く学習は苦痛を与えるといわれています。確かにその通りです。
しかし、文字を書くという作業は、学校教育において避けては通れない作業であります。私は、苦痛だからやらせない、ではなく、なんとか苦痛を緩和しながらも学習できるような教材ができないものかと思って、この教材を開発しました。
数年前に、中高生向けの英単語集として「もえたん」という参考書がありました。それが開発のヒントとなりました。「女の子用に可愛く作ったらどうだろうか?」
「個に応じた教材」とは、ピンポイントにヒットする教材ともいえます。世に広まっている教材は、わりと万人向けに作られている(そうしないと売れないから)ので、そこからたくさんアレンジしていくと、だんだんと「個に応じた教材」を作る力が高まってくるのでないかと思います。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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