2012.08.21
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ICTの研修会に参加して

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

iPad研修1 iPad研修2 ディスカッションテーブル

 

 

北海道特別支援ICT活用PJ主催の研修会と見学会に参加してきました。

8/7の研修会(詳しい要項はこちら北海道特別支援ICT活用PJ)では、タブレットを活用した実証的研究について概要を知ることができました。ここでは、これまでの教材活用の観点からandroid端末を活用した実践について知ることができました。確かに学校現場では、これまでPowerPointを活用した教材、さらにフラッシュを活用した教材が数多く作られ、指導に用いられてきました。それらをタブレットにメリットを生かしながらさらによい教材にしていこうとする観点には共感しました。Android端末に関しては、個人的にボタン類が多く、私が担当しているお子さんたちのことを考えると誤操作が多く起こるかもしれないなとイメージしながらお話を聞かせていただきました。

 早稲田の前野先生からは「タブレットとテクノロジーの展望」ということで今までの経緯と現在の状況、今後の展望についてわかりやすくお話していただきました。私にとってはとても興味深い話で、バックボーンを知っておくことは大事だと改めて感じたところです。後半は各校で先進的に取り組みを進めている先生たちの実践を聞くことができました。ここでは、現在の学習の中で、より子供たちの理解を高めていくためにタブレットはどのような使い方ができるのか、ということの大切さが浮き彫りになりました。タブレットありきで授業を組み立てるとやはり本末転倒になる可能性が十分にあります。いつも私が感じていることと同じでした。アナログとデジタル。ハイテクとローテク。目的と場面、対象によってきちんと使い分けていかないといけません。

 研修の最後は実技研修でした。PowerPointで作成したデータをFlashに変換して、android端末で動かしてみるというものでした。この実技研修は普段iPadを主に使用している私には新鮮でしたし、次のアイディアを考える機会になりました。会場はこちら

 

 翌日、8/8は小樽商科大学で今年4月から試験運用されているアクティブラーニング教室の見学をさせていただきました。

 「10年後のスタンダード」を目指して、作られた教室だということです。こちらでお世話になっている内田洋行さんが設計から設置までを担っているというお話でした。

この教室もアクティブラーニング教室ということで、機器ありきではありませんでした。学生さんたちがいかに自ら発信し、社会とつながっていくことができるか、そしてそのための方法の一つとして取り入れられているのがiPadであり、さまざまなシステムであるということでした。

 …とは言え、ここの機器類は圧巻でした。iPadが50台。教室をぐるっと取り囲むホワイトボード。その全てにさまざまな情報が投影され、書き込まれ、まとめられます。プロジェクターは8台設置とのことでした。教授する側だけが活用するのではなく、学生自らが自分たちの意見を映し出し、共有できる。この双方向、多方向性にアクティブラーニングと呼ばれる手法の秘密がありそうです。

 ただ、情報量の制御が常に必要だなと感じました。実際に講義をされている先生もどのくらいの情報量を学生に提示し、有効に活用できるかを見極めることが必要だと認識していると語っていました。単純にプレゼンする側もサブスクリーン分のスライドや資料を準備するだけでも大変そうです。実際に準備時間、準備量も3倍以上になっているそうです。私が担当するお子さんたちの場合で考えると、「注視物の選択」(7つのキーポイント)などの課題があり、かなり制御して集中できる環境にする必要があることが想像されます。もう1つの教室では、ディスカッションテーブルを中心に見学させていただきました。これは主に企業を中心に活用されている機材だそうです。単純に楽しい!ですね。近未来感満載です。iPadが大きなテーブルになった!で伝わるでしょうか。それらがさらに周りのプロジェクターとスクリーンに連動しています。小樽商大では、主に学生のゼミ活動に使用されているそうです。

 以上簡単ではありますが、研修報告です。教育界でもICTの活用が盛んに言われていますが、課題はそのコストパフォーマンスです。コスパです。小樽商大でもこの部分の検証は今後継続して行われていくそうですし、現時点では学生から大変高い評価をもらっているとのことです。その評価で興味深いものがありました。この教室、授業の評価で一番の影響因子は「教員の活用」なんだそうです。最新の機器に触れたり、学生同士がディスカッションしたり、いろいろな要因がある中で最後は「教員がいかに目的をもって機器を活用し、学生の理解度をあげるか」なんです。楽しいからわかる、ではなく、「わかるから楽しい」なんですね。これは私たちの教育と同じです。「わかった度」をあげるために目的を明確にした上で、機器を有効に活用できるスキルをまだまだ磨いていかなければなりません。

 

 この研修会の中で、北海道特別支援ICT活用PJでAndroid端末をレンタルしてくれていることを知り、さっそく本校にも一台お借りしてきました。これから目的をしっかり持ってその活用方法を実践的に検証していこうと思います。 

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

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