前回の「スケジュールその1」では、主に「たすくスケジュール」の機能についてお話をしました。今回の「その2」では、スケジュールをどのように指導・支援していくのか、その過程について少しだけ触れていきたいと思います。
まず、子供たちにスケジュールを見せて終わりだと機能しません。いきなり写真や絵カードを見せられるだけでは「なんのこっちゃ!?」ですよね。スケジュールをスケジュールとして認知し、自分のために役に立つものとして認知していかないと意味がありません。
そのためには子供たちがどのような提示であれば、認知しやすく、また自ら行動することにつながっていくのかを把握しなければなりません。また、活動できる時間の長さや注視できる範囲、ものにも注意を払わなければなりません(自閉症教育の7つのキーポイント 注視物の選択 を参照)。
提示の種類や内容は、簡易のアセスメントを実施しながら、その都度改善をし、子供たちの認知により合った形でスケジュールを提示したいと考えています。アセスメントと言うとなんだか堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、フォーマルのものではなく、インフォーマルのもので短時間で行えるものにしています。定期的にフォーマルの各種アセスメントを行うことはもちろん必要です。しかし、子供たちへの負荷を考えるとそう何度もすぐに行えるものではありませんし、それだけで指導時間が不足してしまいます。この部分の考え方は教員それぞれ違うのかもしれません。私は、すぐに行えて、すぐに子供たちへの指導が改善でき、子供たちのためになるということを視点として実施を検討しています。
スケジュールに関する簡易アセスメントでは、keynote(写真:左)を使用しました。身近な果物や日用品などを具体物、写真、絵カードと提示し、どのくらいマッチングできるか、左右の提示が認知しやすいのか上下の提示か、文字と絵・写真を組み合わせるとどうか等々をチェックしていきます。その上でスケジュールの提示方法を検討します。また、この過程は一度行うだけではなく、何度もくり返し行っています。子供たちの様子を観察しながら、きちんと認知できているか、またスケジュールを確認した後に、その行動に邁進しているか、途中で逸脱した場合は、どこに原因があったかなどつまづく原因がある時はここに戻ってチェックし直します。私は、まだまだパッと見て子供たちの現在の力、そして将来必要な力を見極められるぐらいの専門性が不足していますので、何かある時には必ずこれらの決まった型で確認し、型で整理した上で、問題点がどこにあるのかを考えるようにしています。
これらの情報をもとにした上で、前回書いた「たすくスケジュール」(写真:中)を学習活動の変更が少ない個人別の課題学習(個人別の課題学習については「自閉症教育実践マスターブック」、ジアース教育新社を参照)の時間から導入しています。私の担当している学級では、毎朝の個人別の課題学習と週に1~2回の個人別の課題学習の時間を設定しています(セッティングの様子は写真:右)。多い週では、週7回ほど個人別の課題学習の時間にたすくスケジュールを用いて自分の取り組むべき課題を確認し、学習することになります。活動の変更が少ないところで基本的な操作を身につけることで日常生活の中へ落とし込んでいけるのではないかと考えています。実際に一学期途中から使用している児童は、自ら操作して学習の確認をし、一人で学習を進められることが増えてきています。
また、よりスケジュールを見る機会と確認する機会を増やしたいと考え、学級全体への提示にも活用し始めています。いままでkeynoteを中心に行っていた朝の会でのスケジュール確認を「たすくスケジュール」を活用した形式に変更しました。このことで子供たちがよりスケジュールの前後のつながりを意識できるようになってきたと感じています(詳細は前回のブログ)。
これらの積み重ねがあって初めてスケジュールが自分の生活を支えるために有効な手段であり、必要性を感じていくのではないかと思います。最終的なねらいは、自分で自分のスケジュールを組み立て、楽しみな活動(余暇活動等)のために仕事をがんばり、より豊かに過ごしていくことです。
追伸
このブログがアップされる日から私はICTの活用に関する研修会に参加中です。8/7は北海道特別支援ICT活用PJ主催の「第9回情報教育研修会」、8/8は同じ主催者の「最先端のICT環境を活用する授業を考える会」にて、内田洋行さんのアプリケーションとプラットフォームシステムを見てきます。またその内容等についてはご報告できればと考えています。この二日間は私が普段考えているデジタルとアナログについて再度考える機会にしたいと思います。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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