今回のつれづれ日誌は、通常の学級で支援が必要な子どもの座席の位置についての話です。
支援が必要な子どもにとって、学習環境はとても大事です。ちょっとした座席への配慮で、子どもの学習が促進されたり、問題行動が軽減したりすることもあります。
原理原則はとってもシンプルです。ポイントは2つ。
○その子どもにとってその座席は適切か?
○他の子どもの学習の妨げになっていないか?
もし、2学期の席替えにお役に立てたら幸いです。また、他にも良いアイディアがありましたら教えていただけるとうれしいです。なお、だいたい30人くらいの規模で、全員が前を向いて座る教授型の座席スタイルを想定しています。
(支援が必要な子ども全般的に)
基本的には、一番前、先生の立ち位置の近くがベストでしょう。
一番前の座席は、当たり前ですが黒板がよく見えるので、視力の弱い子どもにも有効です。また、必要に応じて、先生がすぐ手をさしのべられるので、指導にかける時間的なロスも少なくなります。
(落ち着きがなく、授業中でも大きな声を出したり、騒いだりしてしまう子ども)
窓際か廊下側の前から3番目あたりをおすすめします。一番前は、うるさく目立つので、後ろの子どもが落ち着かなくなるか、後ろの子どもが常にその子どもに注意ばかりしているようになりがちです。
大人でも、電車に乗ると端っこの席が落ち着くという人が多いと思います。同じことが子どもにもいえるようです。
(不安の強い子ども)
後ろの入り口に近いところがいいでしょう。いつでも逃げられるから(笑)。でも、不登校がちの子どもや、転入してきたばかりの子どもは、後ろからの視線がないので、不安感が軽くなります。トイレが近い子などはすぐに教室から出ることのできる場所が安心なようです。
(話をよく聞かない子)
一番前はやめておくとよいでしょう。なぜかというと話を聞くのが苦手な子どもは、周りの友だちの様子を見て、やることを判断していることが多いからです。話を聞いていなくても行動ができるということは、周りを見る力が強いということでもあります。
(書くのが苦手な子ども)
できれば真ん中の一番前。先生の直接的な支援がやはり必要です。端っこは、黒板の文字を見る角度が斜めになるので、文字の型が捉えにくくなることがあります。
(知的障害が疑われる子ども)
直接的な支援が必要なので、基本的には一番前がベストです。でも、周りの様子がよく見える真ん中の席も一度試してみるとよいでしょう。意外と周りの様子を見て行動できるかもしれません。
(行動が遅い子)
後ろの席がよいです。ランドセルとか出口に近いですし、机を後ろに運ぶときも負担が少なくなります。他の子どもより、移動のコスト(歩数)が一歩でも二歩でも少なくなるようにしてあげましょう。
(補助員・介助員がついている子ども)
基本的には一番後ろがいいです。周りの子どもにとって、大人がそばにいることが、どれだけ視界の妨げになっているかを意識してみてください。ただし、大人がべったりとそばについていなくてもよい場合は、その子どもの特性に合わせてください。
(最後に)
先生は、自分のクラスの座席全部に座ってみてください。どの座席から、どのように自分の姿が見えるのか。どこが死角となるのか。板書の文字は見やすいか。子どもの座高に合わせて、他の子どもが座っていることを、頭の中で思い描きながら座ってみてください。
私は、職員室ではなく、放課後の教室で打ち合わせとか相談とかをするのが好きです。実際に子どもがこの教室でどう過ごしているのかを想像しながら、子どもの学習のことを考えると、いろいろとアイディアも湧いてきます。
ちなみに写真は、児童椅子にちょっとした工夫をすることで、姿勢が崩れずに座りやすくなるという支援例です。100円ショップで簡単に手に入ります。

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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