2012.07.24
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スケジュール その1

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

 スケジュール アナログスケジュール デジタル

 

 自閉症の子供たちを支援する際にはいまや必須、基本、当たり前のツールとされています。視覚支援の代名詞!?のようなものかもしれません。

 

 私たちが生活する上で手帳やカレンダーに予定を書き込んで確認しますよね?私たちが指導の際に言う「スケジュール」基本はそれとかわらないと思います。

 特別なことではありません。

 

 二回続きでこのスケジュールについて考えていきたいと思います。

 

 このスケジュール、アナログがメインでした。いや、いまもアナログがメインですね。私の学校ではこのスケジュール提示に一貫性を持たせるためにガイドラインで基本部分を統一しています。この賛否についての議論はまた別なものとして、現在はこの部分を学校として決めています。

 ただし、お子さんによって具体物の提示が理解しやすいのか、写真か、絵カードか、文字か、またはそれぞれの組み合わせなのかということはそれぞれ特性に応じなければなりませんので、一人ひとりに合った形を模索し、カスタマイズしていくということは言うまでもありません。

 

 その前提の上で、私が担当しているお子さんの中で、お子さんに応じてデジタルとの併用を試みています。ここもアナログとデジタルの特性を見極めた上で使用するように心がけていますし、何もかもがデジタルでうまくいくというわけでもありません。

 将来的に大人が手帳を持ち歩いて自分のスケジュールにそって仕事を進めるように、いまの子どもたちが端末を持ち歩いて自分のスケジュールをチェックしながら主体的な生活を送ってほしいとの私の思いがあります。

 

 

 使用しているアプリはこちらです。

「たすくスケジュール」(http://itunes.apple.com/jp/app/tasukusukejuru/id383317351?mt=8)です。アプリを使ってスケジュールを提示したからと言ってすぐに子どもたちが全ての活動を主体的に見通して自ら活動できるようになるというわけではありません。そこには1ステップの提示からスタートし、複数の活動へとつなげていくアナログでの指導の過程があります。その上で、このアプリを使用する理由がいくつかあります。
 

 

 まずは注視しやすいということです。

 子どもたちが絵や写真カードのスケジュールを認知するためにはそのカードに注意が向かなければなりません。端末の枠に見るポイントが絞られ、さらにその枠内で注視するポイントが絞られていくこのアプリはそこをとてもよく考えて作られていると思いますし、実際に子どもたちが使用している様子を見ていると注視できていると考えています。
 

 

 次は、前後のつながりが見通しやすいということです。

 今までのデジタルでの提示はプレゼンソフトを使用することが主流でした。それでも以前示したようにデジタルTVの活用によって提示はずいぶん容易になりましたし、その頻度もあがり、子どもたちにとっては視覚的にとられることのできるものが増え、主体的に行動するきっかけが増えたと考えていますが、プレゼンソフトでの提示は一つの活動提示が主でした。それでもいろいろと提示の方法を変え、活動のつながりを見通せるようにしたいと工夫していたのですが、限界のようなものもあったかもしれません。

 そこがアプリによって大きく変化したと思います。アプリはその目的によって動きが特化されていますので、このスケジュールに特化したアプリを使うことで今まで苦心して提示していた前後のつながりも容易に提示できるようになりました。さらにこのアプリでは動画も提示できますので、実際の動きを確認しながら自分たちの活動のイメージを持つこともできます。実際に私のクラスの造形活動の提示では、はさみで切ったり、のりで貼ったりするところを動画で提示し、子どもたちがイメージをつかんだ上で活動に入るという形で学習しています。まだすぐに動画の内容を全て把握し、全てを自分から主体的に、というところまでは到達できていないのですが、今までははさみの活動一つを終えると離席してしまっていた子どもが次を見通すことで着席したまま次ののりを手にしていたりとその効果が見えてきています。

 

 最後は音声と同時に提示できるということです。アナログのスケジュールの時はコンスタントに活動を音声でも伝えるということはなかなか難しかったのですが、デジタルにすることによってコンスタントに音声でのフィードバックをもらえるということです。ちょっとした違いのようにも思えますが、視覚と聴覚の両方から情報を得ることは大きく違うように思います。認知の度合いが違うかもしれません。

 

 このように考えるとデジタルと併用していくことのメリットは大きく見いだされるかと思います。まだまだこれからの取り組みですが、子どもたちの動きに変化が見られてきていることからも丁寧にこの取り組みを継続していこうと考えています。

 

 今回も徒然なるままになってしまいましたが、次回、さらにこのスケジュールについてご報告していきたいと思います。 

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

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