2012.07.17
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漢字を「耳から」覚える

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

付箋紙

何回か前に、このつれづれ日誌で、ICレコーダーを使った音読のアイディアを紹介したところ、意外にも多くの反響がありました。

ということで、今回はICレコーダーを使ったアイディア第2弾「漢字をICレコーダーで覚える」編をご紹介いたします。

 

このアイディアの対象は、漢字を書くのが苦手な子ども。その中でも、すでに漢字に対して学習意欲を失ってしまっているような子どもに有効だと思います。何回も書き取りするのが苦手だったり、テストで全然点数がとれなかったり。

 

では、やり方です。

まず、漢字をパーツに分解します。たとえば、「分」なら「八」「刀」に分けます。このパーツの分解の仕方は、部首に着目するといいですが、子どもと一緒に「どうやって分けようか?」と、子どものアイディアを大事にするといいと思います。

そして、パーツに名前をつけます。「八」「刀」なら、「はち」「かたな」のように。この命名も、子どもと相談しながら、子どもの自由な発想を大切にするといいと思います。

 

次に、パーツを大きめの付箋に箇条書きします。この段階は、できれば、大人が書いてあげるといいでしょう。なぜなら、この学習の対象の子どもは、書くことが苦手なはずですから。

 ここまでは、わりとよく知られた方法です。ここから、さらに一歩進めます。

 

さて、ここでICレコーダーを使用します。この付箋紙に書いてあることを、子どもが読み上げて、ICレコーダーに録音します。自分の声で録音するところがポイントです。

 

そして、ICレコーダーに録音したものを何度もリピートして聞きます。「耳から」漢字を覚えます。

最後に、録音した漢字の書き取りテストを行います。一度に行うのは、子どもにもよりますが、最初は1個から5個ぐらいの範囲がいいでしょう。なぜなら、このテストは、できれば満点を取って、自信を付けることが目的ですから。

 漢字をテストで書くことができたら、たくさん褒めてあげましょう。

 

これは、漢字の苦手な子どもが、立ち直るためのきっかけ作りです。漢字に対して、やる気とか意欲がでてきたら、漢字の読み方、意味など、その子どもと先生のスキルに応じた持続可能な教材に移行していけるとよいでしょう。

 

 

子どもには、目で見て理解できるタイプと、耳で聞いて理解できるタイプがいます。漢字につまづく子どもの多くは、目で理解するのが弱いタイプです。ですので、「耳から」漢字を覚えることに着目したのが、この方法です。

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

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