注 センソリーダイエットで「体脂肪は減りません」。
センソリーニーズについては前回のアップで簡単に触れさせていただきました。このセンソリーダイエットは、「子どもが必要としている刺激をあらかじめ生活スケジュールの中に組み込んで取り入れられるようにしたり、不快刺激を排除したりして、行動や情緒の安定を図る方法」(岩永竜一郎「もっと笑顔が見たいから 発達デコボコな子どもたちのための感覚運動アプローチ」、花風社、2012)というものです。あらかじめセンソリーニーズを把握し、そのニーズに応じて定期的に刺激を入力していくという方法です。私の担当するクラスでもまだまだ十分ではありませんが一日の生活をスケジューリングする時にこの視点も組み込んで構成するように心がけています。
感覚(センソリー)は、基本的に五感+二覚です。触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚 + 前庭覚、固有受容覚です。前庭覚と固有受容覚は、あまり聞き慣れない単語でしょうか。岩永先生によると「前庭覚は、身体をまっすぐに保つのに必要な感覚、固有受容覚は、関節の曲げ伸ばしや筋肉の動きを脳に伝える感覚」(前掲書)です。この二覚は、デジタルで培うことが難しいですし、アナログの方がはるかに効果はあると思います。うちのクラスでは、登校後に朝の会が始まる前にトランポリンに乗って跳んだり、バランスボールに乗って遊んだりすることでこの二覚のニーズがあるお子さんたちには対応しています。また、休憩時間、給食前などにもこの感覚刺激を入力することによって情動を安定させ、次の活動へ安定して参加できるという効果を実感しているところです。朝の短い時間ではありますが、この活動の有無によってその後の活動への意欲が違ってくるように思います。
さらに話が脱線してしまいますが、朝のリズミカルな運動(バランスボール、トランポリン、時にはウォーキングなど)は、セロトニンの生成に効果があり、睡眠の安定につながるという話もありますから、この活動はうちの学級ではかなりの頻度で組み入れています。ここでは、アナログな活動が主ですからデジタルな活動、iPadを用いてとはなりません。
デジタルツールがこのセンソリーダイエットの中で活躍できるのは、視覚、聴覚のニーズがあるお子さんの場合だと私は考えています。ただし、視覚でも前回ご紹介させていただいたアナログなグッズを好むお子さんには、光の加減や光の反射などを好むことが多いですので、反対側が透けて見えたりすることが重要だったりします。その場合はiPadなどのツールでは対応できないことが多いです。単純に光りの刺激を取り入れることで自分の情動の安定を図るのであれば、写真のようなアプリは有効です(LASER LIGHT SHOW http://itunes.apple.com/jp/app/laser-light-show/id446769509?mt=8)。
このようなアプリを用いて自分の必要としている感覚を入力し、情動を安定させ次の活動へ向かっていくということはとても大切ですし、必要なものだと思います。その中ではこのブログで私が繰り返しお伝えしているアナログとデジタルのメリットの使い分けが重要になってきます。ここでのデジタルのメリットはスペースと携帯性、そしてアプリをチェンジすることによって一つのものでいくつもの違った刺激を取り入れることができる多様性ではないでしょうか。
そして、これらは私たち大人が考えている以上に子どもたちは直感的にアナログかデジタルかを見分け、自分に必要な刺激をセレクトしているようにも思います。私たちができることは子どもたちが選択できるように準備することだけなのかもしれません。
うちの学級では、この視点を取り入れてから子どもたちの活動の切り替えがよくなっていると感じますし、次の活動へ向かう意欲ための安定も得られていると考えています。まだ取り組み半ばでの様子ですので、これからさらに子どもたちのセンソリーニーズを把握しながらサポートしていきたいと思います。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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