センソリーニーズとは センソリー(sensory=感覚)、ニーズ(needs=要求)です。
感覚統合の中でよく聞く言葉だと思いますが、最近では自閉症スペクトラムのお子さんたちを支援する中で少しずつ知られてきている言葉かと思います。好きな、必要な感覚を取り入れて落ち着くことができるのです。また、感覚を調整して再始動するという意味もあるようです。視覚や聴覚はもちろん、触覚や身体を動かすことで得られる前庭覚や固有受容覚といったものまでお子さんの必要とする感覚は様々です。また、スヌーズレンという用語もあります。姫路獨協大学医療保健学部 太田先生によると「重度知的障害者を魅了する感覚刺激空間を用いて彼らにとって最適な余暇やリラクゼーション活動を提供する」とされています(http://www.atsushi.info/snoezelen.html)。私はこの分野の実践にはたけておりませんのでまだまだ勉強する必要があるのですが、その効果は指導しているお子さんたちを通じて感じているところです。
支援学校やその他の施設においてセンソリールームやセンソリーエリアなどを設けているところがあります。残念ながら本校ではまだその実践には取り組めていません。物理的な課題も多いように思います。ですから、学級内で細々とやっているのが現状です。
そんな中でこの分野においてもiPadなどのタブレット端末が活用できるのかどうかを試行錯誤しています。
左から二枚の画像は、私の学級で利用しているアナログのグッズです。左は市販のものを、真ん中は手作りのものです。これらはグッズのうちの一部ですが、子どもたちは必要な時に自分で操作して、一定の感覚刺激を入力することで安定が得られているように思います。それらと同等に使えるものがないかとデジタルでも日夜探しています。デジタルのよさとしては、どこへでも携帯ができるということです。アナログでももちろん携帯できますが、大きさの問題などがあるかと思います。デジタルで代替えできるのであれば、ポケットに入れて持ち運ぶことが可能なわけです。出先でニーズがある時に使えるというわけです。右の画像は「Beatwave」(http://itunes.apple.com/jp/app/beatwave/id363718254?mt=8)というアプリ画面です。これは視覚と聴覚で楽しむことができそうです。複雑な操作は一切ありませんので、どんなお子さんでもすぐに活用できます。その他には、「SenseFrame」(http://itunes.apple.com/jp/app/senseframe-small-version/id412844100?mt=8)や「Anemona」(http://itunes.apple.com/jp/app/anemona/id364741336?mt=8)といったものがあります。これらは視覚的な刺激を入力できます。
ただ、様々なセンソリーニーズに合わせて全てをデジタルで代替えするということは難しいようです。デジタルだと視覚と聴覚に限られてしまうからです。触覚やその他の感覚を得ることは難しいのです。これらはやはりアナログでニーズに応えるしかありません。
以前にも書かせていただいたように、やはりアナログとデジタルはその目的と用途によってそれぞれのメリットに基づいてセレクトしていくということが一番なのだと改めて考えています。移動中や出先で安定を図るために視覚や聴覚刺激を入力するということにおいてデジタルのよさが生かされるのだと思います。そのためには、日々お子さんのセンソリーニーズを的確に把握して、それらを満たすことのできる環境や用具をこちらが的確に提供できるだけの知識と日々の実践が必要なように思います。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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