私は、これまで小学校教員を15年間経験してきました。とかく「教える側」の論理ばかりで行動してきましたが、今年は大学院生として「教わる側」にまわっています。
そこから見えてきたもの・・・「教わる側の論理」。
よく「子どもの立場に立って」とは言われますが、やはり実際に「教わる側」にまわると、リアリティがあります。
今回は、「教わる側の論理」をもとに、小学校教員である私が、大学の先生の授業を、果敢にも(!?)、分析してみたいと思います。
さて、学生に人気のある教授とは、どのような授業をする先生だと思いますか?
一般的に、学生がよく言うこと。
「あの先生の授業はレポートが少ないからラクだ」
「あの先生は出欠を毎回取るから、ちゃんと出席しないとダメだ」
「あの先生の授業は、先生の人柄がいいから好き。」
「あの先生は担当の指導教官だから我慢して聞いている。」
「あの先生は面倒見がいい。」
「あの先生は飲み会でおごってくれる。だからついていく!」
これは、表面上の意見です。こんな意見に左右されてはいけないと思います。
人気取りをしたからといって、それで満足するほど、学生はバカじゃないというのが真実です。(実際のところ、学生自身も錯覚を起こしてしまいやすいのですが。)
本当に学生に人気のある先生は、授業の質が違います。
私が大学院で、この先生の授業はいいなあと感じたことをいくつか挙げます。
(教える内容)
○情報が常に最新のものにアップデートされている。
学生が一番失望するのは、「あの先生の言っていることは古い!」と思えたときです。教える概念自体は古いものでも、最新の情報や知見とどう融合しているか、そんなところが明確になっていると、学生の食い付きがよいものとなります。
(授業の展開)
○拡散と収束が工夫されている。
各自より意見を出して(拡散)、先生がコメントしておしまい(収束)。大学にかかわらず、こういう授業展開って多いですよね。
つまり、拡散は簡単にできるけど、収束するのは難しいということです。
収束が、うまく工夫されている授業は、気持ちのよい授業です。
また次回が楽しみになる授業です。
(教える側の資質)
○教える側の表情
特に男性は、歳を取ると表情筋が固くなると言われています。小学校のような感情的なレスポンスは大学では期待できないですから、表情を作れる先生はきっと日常的に意識しているのではないかと思います。
○教える側の声の張り
学生がいかに学びを深めていけるかは、モチベーションの向上につきると思います。声の張りがある先生の授業は、教室の空気が変わりますよね。
人気のある先生の授業とは・・・一言で言えば、ディティール(細部)にこだわった授業ではないかと思います。
これは、大学に限ったことではなく、高校、中学校、小学校など、全ての校種で共通のことではないでしょうか。
さて、この視点を、自らの「教える側」の実践にどう生かしていくか。
言うは易く行うは難し。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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