2012.05.29
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デジタルか?アナログか?

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

  

 

デジタルか?アナログか?

 

これはICTを推進する上で常に議論されていることの一つではないでしょうか。

 

私の答えは

 

デジタルも、アナログも。

 

です。

 

今回ご紹介する例は、コミュニケーションの指導に用いているPECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム http://www.pecs-japan.com/WhatsPECS.htm)です。PECSはその名のとおり絵カードを用いて、自分の要求を相手に伝えるところから指導がスタートします。

その一端をデジタル(ここではiPhone,iPod touch,iPadが端末になりますが)で可能にしているのが、たすくコミュニケーション(http://itunes.apple.com/jp/app/tasuc-communication/id511169640?l=ja&ls=1&mt=8)です。この他にもコミュニケーションappとしてドロップトーク(http://itunes.apple.com/jp/app/doropputoku/id373051396?mt=8)などがあります。

 

 PECSはステップが組まれている指導法です(詳しくはピラミッド教育コンサルタントオブジャパンのHPや各種ワークショップで直接トレーニングを受けられるのがいいかと思います)。
そのステップの中では、アナログの操作性が重要になってきます。あくまで私見ですが、この操作性はアナログであるからこそ指導の成果があがるのではないだろうかと私は考えています。ですからこのアナログでの指導なしにデジタルへの移行はできないのではないだろうかと思うのです。
そして般化の段階でデジタルツールとの併用、または移行を検討すればよいのではないかと考えています。これはそれぞれのお子さんの認知特性や認知段階などいろいろな視点からのアセスメントが必要になるかと思います。

デジタルツールのよさは、その場で撮った写真をすぐにカードとして用いられることや携帯性にあります。このメリットから考えても、一対一の対面でのやりとり段階での活用ではなく、日常生活の中の数々の場面でコミュニケーションを行う時に用いることがデジタルツールのよさをより効果的に発揮できるのだと思います。

 では、始めからデジタルツールを用いる選択肢はないのだろうかと考えました。結論としてこれはやはり適切ではないと個人的には思います。一枚のカードを選択し、手渡すという過程でのエラー修正が難しいと思います。もちろん、手指機能の課題や身体面の課題でタッチ画面が有効であるお子さんもいますので、これは一概に言うことはできませんが。

 このようなことから「デジタルツールは万能ではない」ですし、指導の中でいかに効果のある場面で投入することができるかを考えることが重要です。
 ここを間違うと身についてきた学習成果が後退してしまうこともあり得るかもしれません。使い勝手がいいですし、お子さんたちの興味関心が高いものでありますので、意欲を引き出すためにも使用することがいいことは十分承知した上で、どの場面で使用することがより効果的なのかは常に視点として持っておくことが必要なように感じています。 

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

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