先日、ある人から中学校の英語に関して次のような質問を受けました。
「bookの複数形はbooksと-sが語尾に付くけれど、sheep(羊)は複数形がsheepで-(e)sが付かないのはどうしてなのか」
中学、高校、大学と英語を学んできた方には、名詞には複数形があるということはご存じだと思います。
少し英語を得意にしていた方には、≪群れを表すような名詞≫では、単数形と複数形が同じであることを知っているかもしれません。
では、sheep以外に≪群れを表すような名詞≫は他に何があるのかご存じでしょうか。
「deer」(鹿)「fish」(魚)「squid」(イカ)「moose」(動物のムース)「salmon」(サケ)「Japanese」(日本人)などがあるようです。
(参考:http://www.nihonbunka.com/eigodaigaku/archives/000034.html)
上の説明は、あくまで名詞の複数形に関する知識であります。これで名詞の複数形について些末ですが、疑問が氷解した気に生徒はなるかもしれません。さらに、ちょっとでも英語という言葉に興味を持ってもらえると嬉しいです。
さてこれは、「教える」ことになるでしょうか。知識の事を紹介していますが、私は、不十分ではないかと思います。
では「教える」とは、どういうことなのでしょうか。
色々なご意見やお考えがあると思います。
今回に関して、たとえば次のようなことを考えてみましょう。
(1)「この単語を10回ノートに書いて綴りが書けるように練習しよう。」など学習の仕方について指示が出せること。
(2)「shの部分はシャシュショのような/ʃ/(ロングエスと呼ぶ)の発音をする。」などのように綴りと発音の関係を意識させるような説明を加えること。
(3)実際に指導者の後に続けて、生徒に/シープ/と発音させること。
(4)sheepを用いた例文を紹介し、会話や対話文の中で使うこと。
(5)フラッシュカードを作り、それを見せながら発音を一人ひとり確認すること。
(6)人差し指を使って、sheepの綴りを空中で、指なぞり書きをさせること。
(7)「1分以内に何回書けるか練習してみよう。」などゲーム化する。
(8)sheepとshipを書いたカードを見せて、発音の違いに気付かせること。
(9)羊の絵カードを見せて、/シープ/と生徒に発音させること。
(10)他に幾つかの動物の英語も紹介して、複数形との関係も練習すること。
これでもまだ不十分かもしれません。sheepという一つの単語に執着するのではありません。コミュニケーションの授受ができるようになるというより大きな目標の下で、その場面ごとに、どのような活動が相応しいのか考え、そのために使える引き出しが十分あるかが大切になってきます。
英語科の指導要領の目標の下で、生徒の実態に応じて、どのような教育的な活動が相応しいのかという大局に立って取捨選択できる能力も、「教える」ことの一つだと考えてみます。
さて、ある方というのは、私の若かりしとしておきましょうか。当時陸上の顧問を引き受けていたという理由で、選択の体育を担当しました。また中学、高校とブラスバンド部の経験があるという理由で、同じく選択の音楽の授業を担当していました。
当時はもちろん片手間に授業を担当していた訳ではありません。本当に一生懸命であったと思います。ただ当時の生徒は、英語の先生である私をどう思っていたのでしょうか。
ただ、「教える」というのは、非常に難しいことだと感じました。
今も、様々な事情・状況下で、免許外(臨免)または専門外(小学英語などその最たるもの)で、本当に一生懸命にご指導いただいている先生方がいらっしゃる場合があるかと思います。
釈迦に説法かもしれません。今一度、「問題が解けることや、知識として知っていることと、教えることとは大きく異なる場合もある」という認識を加えていただければ幸いかと思います。
P.S. 今『情報A』という科目(臨免)も担当しております。パソコンをある程度知っていそうだから、という理由で。でもこれは、趣味の域で楽しんでおります。実はこんなスタンスも大事なのかもしれません。
失礼いたします。
岩本 昌明(いわもと まさあき)
富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。
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