みなさん、お元気ですか。
私はここ1週間ほどひどい五十肩で困っています。年には勝てません。
幸い、本校には理療科があり実習教育の一環として施術を受けさせていただいております。
先日も「先生、揉み返しがあるかもしれませんからね」と言われ、
かなりの強さで右肩から背中にかけて揉みほぐしていただきました。
1回でおしまいでなく、しばらく定期的に受ける必要があるようです。
でも、このように対処療法的な施術ではなく、本当はもっと根本的なところから変えないといけないことも生徒さんから教えていただきました。
来年の2月の国家試験で資格を取って、無事社会に羽ばたいて世の中の人のために
役立つ人材として育っていただきたいと願っています。
さて、4月の新しい年度も色々と始動してきている時期ではないかと推察いたします。
そんな頃ではありますが、敢えて今回は、別れの場面を振り返ってみたいと思います。
一つは視覚総合支援学校という視覚障害ならではの、私個人が取り組んだA君の「音の卒業アルバム」作りについてです。
「卒業アルバム」というと、中学、高校と1冊の重厚(?)な装丁の写真集を思い出される方が多いのではないでしょうか。色々な青春の想い出が凝縮しているのではないでしょうか。
でも全盲の生徒には、写真や動画などの映像類は、あまり興味も意味もないようです。むしろ〈音〉の方が一番の思い出になるようです。
保護者から要望もあり、私は、本人と話し合い(相談を)して、「音の卒業アルバム」を作ってみることにしました。
内容は、次のようなものです。
1つ目は、お世話になった先生方からの声のメッセージをもらうことです。
ICレコーダーに
(1)先生のお名前
(2)何の教科を担当してもらったのか
(3)何年間担当していただいたのか
(4)担当していただいての印象や感想や思い出などを含めて
の卒業を祝うメッセージを吹き込んでもらいました。
2つ目は、下級生や同級生や同じく卒業して離れ離れになる友達からのメッセージをもらうことです。
(1)名前
(2)思い出を含めて
卒業を祝うメッセージを吹き込んでもらいました。
3つ目は、未完成なのですが、朝から放課後までの学校の流れが思いだせるシーンに関連する〈音〉のアンソロジーです。
(1)生徒が玄関に入る前に流れる注意音
(2)8時30分頃に放送される、時間割変更連絡
(3)1時間目からの始業や終了のチャイム
(4)給食での生徒会からの週番などの連絡
(5)南館、北館など校舎での特有な音
(6)学校内で耳にする人が活動している様々な音
(7)学校内で発生している様々な音(私には単に雑音や騒音としか感じない音も含めて)
(8)定期的に耳にする音(ゴミ収集車の音、学校バスの暖気運転をしている音、ボイラの音、自動販売機の飲料水を冷している音、パソコンの立ち上げや様々な作業をする時にパソコンが読み上げてくれる音、清掃時の蛇口からの水の音など)
4つ目は、私なりに収集しておいた映像や音声(音源)を、3年間の流れや学校行事に合わせてDVDにしてみました(授業担当者からの映像の提供もありました)。
(1)校内弁論大会での音声
(2)ボランティア活動でのピアノ演奏など演奏曲
(3)学習発表会、卒業生を祝う集い等での映像(音声含む)
(4)就労体験学習での実習の映像(音声含む)
(5)修学旅行で関東方面へ行ったときに録音した車内放送の音
(6)教科担当からの授業の様子
5つ目は、4と同様に機会あるごとに保存してきた文書類のデータです。パソコンの読み上げ機能やPCTalkerという音声ソフトで読み上げくれるのです。
どの音や映像や文書を「音の卒業アルバム」に採用するかは、基本的には本人に選んでもらいました。
保護者の方用には「写真・映像などの卒業アルバム(CDかDVD)」を別途作成してお渡ししました。
この取り組みを通して
1.3年間を私なりに振り返るよい機会になりました。
2.教科の先生からも写真や映像の提供を受けることができ、これだけ手厚く一人ひとりの生徒に教育的愛情を注いでいただけていることは、なんと幸福者だろうと感謝いたしました。
3.非常に多くの散逸していた文書類を集約し1冊にまとめる機会をつくることができました。「給食だより」「行事予定表」「進路に関する案内」「学校からの様々な案内や実施要項」や「スポーツ競技の記録」「文化活動の受賞歴」など多岐に渡っていることに驚きました。
4.生徒が様々な〈音〉に囲まれて学校生活をし、〈音〉を頼りに判断し行動をとってきたことを通して、改めて〈音〉の多様性と意義深さを思い知らされました。
蝸牛のように遅いと叱責をいただくかもしれませんが、残っている未完の部分の完成に向けて再スタートを切りたいと思います。
皆さまからも、ささやかな心温まるユニークな(卒業にまつわる)取り組みなどを教えていただければ幸いです。
失礼いたします。
岩本 昌明(いわもと まさあき)
富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。
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