2012.05.01
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自ら動くための環境設定

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

朝の会セッティング1

朝の会は、学級の子どもたちと一日を過ごすためのファーストコンタクト。

 

私としては、一人ひとりとは朝の身支度で接し、その日の調子などを見ることができますが、全員がそろった状態で今日一日を学級としてどのように過ごせばよいのかを判断できる場でもあるのでとても大切にしています。また、子どもたちにとっても朝の会にスムーズに入れ、役割を果たすことで達成感を得ることができ、その一日をより充実感を持って過ごしてくれるのではないだろうかと考えています。

そのためには一つひとつの動きを指示され、訂正され、修正されては子どもたちは達成感を得ることができないのではないでしょうか。

 

 子どもたちが環境を把握し、自らの活動に主体的に取り組んでこそ達成感を得ることができるのだと思います。その環境を把握するためには、まずは何をするべきかわかりやすく提示し、わかりやすい動線で活動できることが必要だと考え環境設定することを心がけています。その上で、

キーワードは「主体性」。

この「主体性」という文言にはいろいろな解釈がありますが、私は指導の際の一つの軸として特総研から出されている「自閉症教育の7つのキーポイント」(参照:自閉症教育実践マスターブック

http://www.kyoikushinsha.co.jp/book/0087/index.html)に示された「学習態勢」「指示理解」「セルフマネジメント」「表出性のコミュニケーション」「強化システムの理解」「模倣」「注視物の選択」を考えています。この7つのキーポイントについては今後も折に触れ、できるかぎりお伝えしていきます。

現在の朝の会の活動では、7つのキーポイントの中の「注視物の選択」にポイントを置いて、さらに子どもたちの「動作・操作を伴う活動が得意」であるという特性を考慮しながら活動を構成しています。

そこで登場するのが、写真にもあるタブレット端末です。視覚的な情報の処理が得意なお子さんが多いこともあり(これは一概に自閉症スペクトラムであるから視覚的情報が優位ということではなく、なかには聴覚情報の処理が優位というお子さんもいますので日々のアセスメントが必要になります)、まずは提示をわかりやすくします。さらにそれぞれの役割に応じてタブレット端末を操作しながら自分の活動へ移行していくように設定をします。必要な情報を瞬時に視覚的に提示でき、伝えられることはもちろんですが、タブレット端末のよさはその操作性にあると考えています。実際に子どもたちは誰が教えるわけでもなく、タブレット端末の扱いを自分たちで習得していくことが多いと実感していますし、その覚えるスピードは我々大人の比ではありません。これはPCの操作を指導していく過程と大きく異なるように感じています。

まだ小1の入学したばかりの段階ですからすべての活動が自ら動き出せているわけではありませんが、この環境設定で、さらにタブレット端末という自分たちが操作可能な機器を設置したことにより自分で「見て」、「動き出せる」回数が増えてきています。単純にこの行動の結果をこの理由だけに求めるのは拙速かもしれませんが、大きな一因であるのは間違いないように思います。

 

特別支援教育におけるタブレット端末を用いた教育実践はその数が増えてきています。最初は個人別の課題学習や視覚的な提示においてその有効性が多く検証されていたかと思いますが、私はさらにその活用の可能性について広げていきたいと考えています。数々の実践に学びながら日々子どもたちのために改善していければと思います。 

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

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