3月は巣立ちの季節。
こう言うと卒業学年の子ども達がクローズアップされますが、年中生や小学5年生も翌年の巣立ちに向けていよいよ気持ちを本格化させる時期でもあります。
障害をもつ子ども達にとって、進学はひとつのターニングポイント。
保護者も、いわゆる「学校選び」について頭を悩ませる方が多いようです。
保護者からよく聞かれる相談に「ウチの子にあった学校がない」ということがあります。
例えば、中学校になれば、小学校みたいに手厚く見てもらえない、というイメージがあるようです。
私も真偽のほどはわかりませんが、子どもの発達段階から考えると、自主自立を迎えるこの時期にいつまでもベタベタしていることはいかがなものかと理解できます。
小学校においても、東京では、わりと通学可能な範囲に複数の特別支援学級や私立学校があるため、選ぶ余地があることがかえって悩みのタネになっていることが多いようです。私の勤務する区では、特別支援学級は自由選択制にはなっていませんが、それでもより我が子にあった学校を探すため、多くの保護者が学校公開を利用してあちこちの学校を見学してまわっています。
けれども、1回くらい学級を見学しただけではわからないことも多くあると思います。
そこで長年、特別支援学級に携わってきた筆者が、「成功する特別支援学級選び」のポイントをあげてみます。
(1)自宅から近い学校であること
当たり前のことですが、これがまず大事です。
よく熱心な療育機関の先生方が「将来、バスや電車を使って通勤することもあるのだから、その練習を小学校のうちからしておくべき」と言われ、真に受け、遠方の学校へ子どもを通わす方もいらっしゃいます。ですけど、まったく将来予想に対する根拠がない話です。15年前に苦労しながら毎日登下校時に切符を買う練習をしていた子が、今はスイカでピッ! あの苦労はなんだったのか、なんて話もあります。それよりも最近では登下校時のトラブルや災害時などのリスクの方が高いですね。
(2)先生で選ぶな
これもよく考えれば当たり前ですが、教員には異動があります。6年間ずっと見てくれるといった保障はないどころか、極めて稀なケースといってもいいでしょう。
「あの先生がいるから・・・」ということで勧められたり、わざわざ転居までして入学したなんて話もよく聞きます。ワラにもすがる保護者の気持ちはわかりますが、一時の感情に流されないように。
(3)2年以上前の情報はあてにするな
特別支援学級は、そのときのスタッフ次第で大きく運営方針が変わったりするものです。いい言い方をすれば、そのとき預かっている子どもは毎年変わるわけですから、その子ども達の実態に合わせて学級運営も変わっていかなければならない、という特別支援学級の事情があります。古い情報に惑わされないようにしましょう。
(4)通級学級を利用する場合は
通級学級が併設されている学校へ入学して、校内通級を利用するというケースがよくありますが、これにも一長一短があります。
メリットは、通学の手間が省けること。校内支援や理解がわりとスムーズに運ぶこと。
デメリットは、同じような子どもが通常の学級に何人も集まることになり、トラブルが起きやすくなること。子ども自身が通級学級を逃げ場にしてしまいメリハリがつかなくなることでしょう。
このサイトを見ている方は、おそらく学校関係者が多いと思います。通常の学級に在籍する子ども達で、進学にあたり特別支援学級への転学を考えているケースもあるはずです。先生方のアドバイスの一助となれば幸いです。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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