2012.02.22
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子どもが歩かなくなった ~東京都の調査より~

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

今回は、子どもの身体活動量について書きます

 

東京都が子どもの歩数についての調査をしたという記事が、先日の新聞に載っていました。

これまでも、小さい規模で行われた調査は、ありました。

しかし、これだけ大規模に行われたのは、多分初めてだと思います。

詳しい内容は、東京都のHPを見てもらいたいのですが、興味深いものを少し紹介します。

 

 ・全学年男女共に、休日よりも平日の平均歩数が上回った。
 ・全学年共に、休日の平均歩数の分布は、平日よりも幅が広がっている。

 

これらは、学校においては、ほぼ同じような活動量をしているが、家庭においては、それぞれの家庭によって活動量に違いがあるということを示しています。

学校では、週に2~3回、体育の授業があります。

その他にも、休み時間があります。

皆で運動をしようという機会にしている学校もあります。

また、都市部の多くの学校では、毎日、歩いて登校しています。

(地方では、バスでの通学という形もあり、そうなると活動量は減ります。)

 

家庭に目を移すと、休日にスポーツをしている家庭では、非常に活動量が増えます。

東京都の調査では、休日に90000歩も歩いていた子どももいたそうです。

逆に、ほとんど歩いていない子どももいます。

家からあまり出ない、出たとしても、車で買い物くらいだと、活動量は増えません。

親が運動をするかということも影響を与えているでしょう。

散歩やランニングをする親ならば、子どもも一緒にすることが多いでしょう。

このように、家庭での過ごし方が子どもの活動量に大きな影響を与えています。

 

また、調査報告に次のようなものがありました。

 

・体力・運動能力総合評価(ABCDEの5段階)がA段階の児童・生徒は、平日・校内活動・放課後活動・休日・1日の平均歩数の全てにおいてE段階の児童・生徒より歩数が多かった。

 

これは、簡単に言うと「運動能力と歩数に関連がある。」ということです。

 

小学校での子ども達の様子を見ていると、休み時間などに元気に外に遊びに行っている子どもは、体力テストなどをしても好結果であることが多いです。

よく体を動かす遊びをしているから、運動能力があがると考えられます。

運動能力が高いから、体を動かす遊びをしていても楽しいので、さらに運動をしようという気持ちになり結果として運動能力が高まるということになります。

あまり運動が得意でない子どもは、あまり外遊びをしないので、運動能力があまり伸びないということになります。

「二極化」の問題です。

休み時間の外遊びについて、書きましたが、体育の授業においても同様です。

私がよく取り組んでいる鬼ごっこにおいて、教師が特別に関わらないでいると、運動好きな子どもが元気に走りまわっている一方、運動嫌いな子どもは隅のほうで止まっていたりします。

教師が関与し、あまり動いていない子どもを動かすよう促します。

そういった経験から、体を動かすことの楽しさを感じてもらえたらと思っています。

 

周りの大人(学校では教師、家では親など)の積極的な関わりが、子どもの運動への意識、身体活動量へ大きな影響を与えています。

 

こういったことを、東京都が調査したことで、マスコミでも報道されます。

とても良いことなのだと思います。

専門家の間では、話題になっていることが、世の中の多くの人に伝わることによって、多くの人が考えるようになります。

今回の調査がきっかけで、何かが少しずつでも変わり出すといいと思っています。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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