最近よく聞かれる言葉です。だから、「ウチのクラスでは特別支援の必要はありません」と。
これも特別支援教育が現場で普及したからこそ言える(!?)ことなのかもしれません。
では特別支援教育の対象児童とは、一体誰のことでしょうか。
医療にかかっている子どものことでしょうか?
ADHDとかLDとか、障害名がついている子どものことでしょうか?
もちろん特別な支援が必要な対象児童に手厚い支援を施していくのが特別支援教育の目的です。でも、特別支援教育の目指すところは、対象児童のみに特化された指導法ではないのです。
真髄は、「どの子でも、あるとうれしい」支援なのです。
このように言うと、例えば駅の電光掲示板のように「万人があるとうれしい」支援を想像されますよね。前号でもお伝えしましたが、それもまた大事な支援です。
けれど、それは一斉指導の枠の中での話になります。
「ウチのクラスでは特別支援の必要はありません」の裏の意味は、おそらく学力的に低位の子どもが少ないという意味なのでしょう。だから、特別に学習をフォローする必要のある児童がいないと。
それでしたら、逆に普通の学習では満足できない児童に目を向けていく必要もあるのではないでしょうか?
アメリカでは2E教育という言葉があります。「二重に特別な(twice-exceptional)」という意味で、発達のでこぼこがありながらも学力が高い児童への支援に使われています。
日本でも「発展学習」という概念がありますね。得意なことや、得意な才能を開花させていくこと。これもまた立派な特別支援教育なのではないかと思います。
今年2012年にはこういう言葉があふれてくるといいですね。
「ウチのクラスには特別支援の対象児がいるとかいないとかに関係なく、どの子も満足できるように授業を工夫しています。」
これこそが、特別支援教育の本質につながってきます。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
同じテーマの執筆者
-
東京都立白鷺特別支援学校 中学部 教諭・自閉症スペクトラム支援士・早稲田大学大学院 教育学研究科 修士課程2年
-
東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)
-
富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
-
北海道札幌養護学校 教諭
-
東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士
-
福島県立あぶくま養護学校 教諭
-
東京都立港特別支援学校 教諭
-
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
-
福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士
-
信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
-
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
-
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師
-
寝屋川市立小学校
-
目黒区立不動小学校 主幹教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)