2012.02.14
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ウチのクラスには特別支援の対象児はいません!?~2012年レベルの特別支援教育その2

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

 最近よく聞かれる言葉です。だから、「ウチのクラスでは特別支援の必要はありません」と。

 

 これも特別支援教育が現場で普及したからこそ言える(!?)ことなのかもしれません。

 

 では特別支援教育の対象児童とは、一体誰のことでしょうか。

 

 医療にかかっている子どものことでしょうか?

 ADHDとかLDとか、障害名がついている子どものことでしょうか?

 

 もちろん特別な支援が必要な対象児童に手厚い支援を施していくのが特別支援教育の目的です。でも、特別支援教育の目指すところは、対象児童のみに特化された指導法ではないのです。

 真髄は、「どの子でも、あるとうれしい」支援なのです。

 

 このように言うと、例えば駅の電光掲示板のように「万人があるとうれしい」支援を想像されますよね。前号でもお伝えしましたが、それもまた大事な支援です。

 けれど、それは一斉指導の枠の中での話になります。

 

 「ウチのクラスでは特別支援の必要はありません」の裏の意味は、おそらく学力的に低位の子どもが少ないという意味なのでしょう。だから、特別に学習をフォローする必要のある児童がいないと。

 

 それでしたら、逆に普通の学習では満足できない児童に目を向けていく必要もあるのではないでしょうか?

 

 アメリカでは2E教育という言葉があります。「二重に特別な(twice-exceptional)」という意味で、発達のでこぼこがありながらも学力が高い児童への支援に使われています。

 

 日本でも「発展学習」という概念がありますね。得意なことや、得意な才能を開花させていくこと。これもまた立派な特別支援教育なのではないかと思います。

 

 

 今年2012年にはこういう言葉があふれてくるといいですね。

 「ウチのクラスには特別支援の対象児がいるとかいないとかに関係なく、どの子も満足できるように授業を工夫しています。」

 

 これこそが、特別支援教育の本質につながってきます。

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

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