私がつれづれ日誌でメインテーマとしている「特別支援教育」。この数年で学校現場ではだいぶ市民権を得てきたと思います。
学校で、支援を要する子どもたちに対して、従来にはなかった対応を施したり、許可したり、施設環境を整えたり、個別指導計画を作成したり・・・そのような支援が現場では違和感なく行われてきています。特別支援教育の前身である「心身障害児教育」や「特殊教育」などと呼ばれていた時代から比べ、とても大きな進展であると思います。
通常の学級の授業において、特別支援教育の視点で授業改善を行っていく取り組みも、あちこちで行われるようになってきました。
授業の流れをカードでわかりやすく示したり、発問を板書したり、テレビモニターなどの機器を使ったり、教室の前方に目隠しをして余計な刺激を減らしたり。話す言葉は一瞬で物理的には消えてしまいますが、文字にして見えるように残しておけば聞き取りが弱い子どもたちに対してとても有効な支援となります。いや、全ての子ども達にとっても有効であると言ってもよいでしょう。
日常生活の中でも、テレビのテロップ、駅の電光掲示板などは、まさにこの支援と同じです。全ての人に対して、物事をわかりやすく伝えるために有効ですよね。
これは「視覚化」というキーワードでくくることができるかと思います。特別支援教育の視点で授業改善を行っていくと、まずこの「視覚化」というキーワードが重要になります。
さて、学校現場ではこのような視覚化された授業も多く見られるようになってきています。しかしながら、これだけで「私は特別支援を施した授業をしている」と満足されては子どもが困るかと思います。
視覚化を一歩進める、それが私が今年学校で行うべきであろうと考える2012年レベルの特別支援教育です。
一歩進めるということは、一歩考えを深めるということです。何のために視覚化するのか?と一歩踏み込んだ本質を考えてみます。
何のために視覚化するのか?という問いは、どうやったら教える内容を的確に伝えられるか?へ、子ども達が本当に支援して欲しいことはなにか?へ、発展していくのではないでしょうか。
駅の電光掲示板やモニター表示は、とても情報を得やすいです。
でも、本当に欲しい情報は、その時々によって異なると思います。
見知らぬ電車に乗ったときは、何番線に乗ればいいかとか、行きたい駅に本当に止まるかとか、どの出口に向かえばいいかなど、より詳細な情報が欲しいです。
反対に、いつも乗っている路線では、何時何分に電車が来るという情報くらいしか興味がありません。
これは、授業においても同じことが言えるのではないでしょうか。そのときに本当に必要なことを子ども達に提示できるような視覚化の仕掛けであるべきではないかと思います。
「特別支援教育」はまさに本質論に行き着きます!
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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