2011.11.30
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「運動嫌い」をなくしたい・・・

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

 

 

「運動嫌い」について書きます。

 

上の写真は私の学校で業間体育で取り組んでいる「5分間走」です。

子どもが小学校の体育の授業で嫌がるものがいくつかあります。

「持久走」はその筆頭かもしれません。

それ以外で多くの子どもが嫌がるものに「鉄棒」があります。

なぜ、子どもが鉄棒を嫌がるかと言うと、「できる」「できない」がはっきりと分かれているからです。

 

走る、投げるなどは、上手下手はあっても、ほとんどの子どもができます。

ドッジボールなどの球技も、積極的に参加しなくとも、一応ゲームに参加することはできます。

運動嫌いの子どもは、大活躍する訳ではないけれど、チームに迷惑をかけない程度の参加はできます。

そういった中である程度の参加実感があるのでしょう。

 

しかし、鉄棒は、できる子はできるし、できない子はできないということがはっきりしてしまいます。

その上、鉄棒ができるようになるには、複合したテクニック(筋力も含めて)の獲得が必要とされます。

逆上がりができるようになるには、腹筋、腕力などの筋力、そして身体全体をスムーズに動かすコーディネイト能力が必要とされます。

さらに、体重が重い(太っている)子どもは、難易度が相当上がってしまいます。

 

また、小さい頃からの運動経験が非常に影響します。

あまり小さい頃から外遊びをしてこなかった子どもに対して逆上がりは相当難しい課題です。

鉄棒に向かって逆上がりの練習をしても、なかなかできるようになりません。

理由は、上で書いたように複合的な要因からです。

 

学校では、できるようにさせようとして、何度も何度も練習をさせようとします。

真面目な先生ほど、できるようにさせてあげようとして、厳しく指導します。

数週間練習するのですが、結果的にできないという子どもが何人か出てしまいます。

そういった子どもはさらに「運動嫌い」になってしまいます。

 

学級担任として、鉄棒に関わる場合、できる限り色々な技の紹介をします。

全員ができるような「ぶたの丸焼き」から高度な「グライダー」まで相当数を紹介します。

そして、一つの技(例えば、逆上がり)の「できた」「できない」だけに焦点がいかないよう配慮します。

もちろん、それぞれのレベルにあった指導はしていきます。

技がたくさんあることは、ステップが増えたことになり、小さな「できた」が増えます。

 

前にも書いたように 「できた」→「楽しい」 という流れはとても大切です。

  

この15年くらい、どうしたら「運動嫌い」をなくせるのかについて考えてきました。

本を読んだり、専門家の話を聞いたり、子どもを使って実際に試してみたり・・・。

 

結論として、キーワードは「楽しさ」です。

 

今まで紹介してきた「鬼ごっこ」も「流星ボール」も、そこには運動が苦手な子どもが「楽しさ」を感じられる仕組みがあります。

その「楽しさ」は、その子どもの運動習慣を変える可能性があります。

 

今まで、休み時間に外遊びをしたこともなかった子どもが外で遊ぶようになったり、少しだけ自分の身体活動量を気にするようになったり・・・。

大きな進歩だと思います。

 

これらは、社会的にみると、生涯スポーツへの連携、さらに進めていくと、将来の医療費の削減へとつながります。

子どもの頃に肥満傾向の子どもは、将来も肥満である可能性が高く、生活習慣病のリスクも高いとされています。

子どもの頃に、運動に親しむ習慣(最低でも運動が嫌いではない)が作られることで、その子どもの人生を大きく変える可能性があります。

 

それは、個人としてだけではなく、医療費の削減などの社会全体としても意味のあることになります。

 

小学校の教員など、子どもの運動に関わる立場の人は、そういったことを意識し、行動することが求められているのではないでしょうか。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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