2011.11.02
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鬼ごっこで体力アップ!

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

今回は「鬼ごっこ」について書きます。

 

この5年くらい、鬼ごっこに注目しています。

 

実践を日本フィットネス協会のフィットネス指導実践報告会という所で発表しています。

そこで、色々な刺激をもらいながら、さらに実践を進めてます。

東海大学の小澤先生の「風車理論」や兵庫で放課後運動教室を主宰し、大学の非常勤講師もしている健康運動指導士の村田さんなどから多くの刺激をもらっています。

 

さて、現在の子どもを取り巻く大きな問題に「子どもの体力の低下」があります。

文科省などの調査では、親の世代と比べ、全体的に体力が低下してきており、二極化(できる子どもとできない子ども)が進んでいるとあります。

それを受け、この数年、学校や自治体などで様々な体力増進の取り組みが行われました。

今年の体育の日に発表された子どもの体力の調査結果では、体力の低下は下げ止まりにあり、少し上昇した項目もありました。

しかし、二極化は依然大きな問題であるとあります。

 

さて、鬼ごっこに話を戻します。

いくつかの先行研究にあるように、持久力、敏捷性、走力などを向上させます。

 

また、それだけでなく、子ども同士のコミュニケーション能力の育成やルール作りなどの過程における社会性の育成などにも効果があるとされています。

 

そういった中で、私が注目しているのが鬼ごっこの「楽しさ」です。

体育の学習内容の中で、持久走や鉄棒などと比べ、鬼ごっこは「楽しい」と感じる子どもが多いです。

 

先ほど書いた体力の二極化の下位層の子ども達は、次の様な特徴があります。

 ○体力テストの成績が悪い

 ○あまり自分から外遊びなどをしない

 ○運動嫌いなことが多い

 

また、運動に対しての気持ちは次にようになるようです。

 

「・・・・ つまらない → きらい → やりたくない → 練習しない → 

  上達しない → できない(記録が伸びない) → つまらない ・・・・」

 

私はこれを運動嫌いの「負のスパイラル」と呼んでいます。

「負のスパイラル」になると運動をやればやるほど、嫌いになっていってしまいます。

 

鬼ごっこは、この負のスパイラルに大きな変化を引き起こす可能性があります。

「つまらない」の部分が「楽しい」に変わることで、大きな変化が起きます。

 

「・・・・ 楽しい → やってみよう → 練習する → 上達する →

  できる → 楽しい → 好き → やってみよう ・・・」

 

このような「正のスパイラル」ができることで、二極化の下位層の子ども達の運動に対する取り組みが変わりだします。

私の実践では、鬼ごっこは、普段あまり運動をしないような子どもでも運動の楽しさを味わえることが分かっています。

そのことがきっかけで、普段あまり休み時間に外遊びをしない子どもが、自分から外遊びに行くようになったり、体育の時間の中でもたくさん動くようになったりしていました。

 

ところで、二極化の下位層の子ども達は、生活習慣病の予備軍です。

子どもの頃の肥満傾向は、大人になっても大きな影響があるとされています。

小学校時代に運動への取り組みを否定的なものからそうでないものへと変化させることで、その子どもの人生へも影響があると言えるでしょう。

将来の社会の主な構成員を健康的な状態にし、現在、社会で大きな問題となっている医療費を削減することにつながっていく可能性を秘めています。

 

「鬼ごっこ」が将来の日本を救うきっかけとなるかもしれません。

 

健康で生き生きとした人生を送ることのできる人がたくさんいる社会を作りたいものです。

 

※鬼ごっこについての実践などをまとめた私のホームページがあります。

 興味のある方はご覧ください。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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