皆さんは、童話というと、どんな作品を思い浮かべますか?
もっとも親しみやすいのは、日本の昔話やグリム童話、イソップ童話だと思います。多くの方が、「浦島太郎」や「一寸法師」、「白雪姫」や「赤ずきんちゃん」「人魚姫」などを、一度は手に取られたことがあるのではないでしょうか。
さて、たくさんの童話を読んでみると、様々な特徴を発見することができます。
ひとつは、主人公が正義感や美しい心をもつことによって、幸せが訪れるといった話が数多くみられることです。
また、「昔々、あるところに」で始まる昔話や童話がたくさんあります。これは、いつの時代にも、どこであっても起こりうることを意味しているそうです。
それから、場所によって表される特徴もあります。例えば「森」で表現されるのは、「何が潜んでいるかわからない」とか、「動物がすんでいれば、魔女やこびとも現れるのではないか」といったぞくぞくした心を呼び起こすような場面です。
さらに、登場人物の性格にも特徴があります。王様、王女様、魔女、羊飼い、おじいさん、おばあさんなどの性格は、どの童話でもよく似ています。そのような特徴は動物にも当てはまり、オオカミが怖い存在であったり、キツネが狡猾であったりすることは、共通しているのです。ですから、登場する人物や動物がわかれば、物語の結末のおおよそが想像できることになります。
前置きが長くなりましたが、「童話の続きを想像して書いてみよう」という学習を、6年生が行いました。今の子どもたちは、前述したような特徴を熟知するほど童話を読み込んでいないので、事前にお話の性格付けを行う必要がありました。また、主人公は自分自身を、結末は自分の未来を表現するということも話しました。
さて、教材として使った童話の前半は、おおむね次のような内容です。
『昔、あるところに仕立屋の男が住んでいました。
少しばかりのお金を持って旅に出かけ、ある店でスープを飲みました。ところが、そのスープにはハエが真っ黒になるほどたかるので、片端から叩き落としました。それで、ハエを数えてみると、100匹ほどでした。
男が板きれに、「私は一度に百の敵を打ち落とした」と書いて、それを背中にかけて歩いていくと、王様がそれを見て、熊を退治してくれるように頼みました。男は、知恵を使ってかんたんに熊を退治しました。
そこで王様は、「次に巨人を退治してもらいたい」と言いました。男は、ほうびにたくさんの金貨をもらいたいと言って、退治することを引き受けました。また、成功した暁には、王女と結婚したいとも言いました。
そして、ポケットにヒバリとチーズを入れ、食べ物を車に積んで出かけました』
さあ、この続きはどうなったでしょう?
ある男子が、コンパクトにお話をまとめたので、紹介します。
「仕立屋がヒバリとチーズをもって巨人のところに行くと、大きな家がたくさん並んで建っていました。
そこで仕立屋は、ヒバリにチーズを塗って飛ばしました。すると、巨人が何人も何人も出てきました。そしてヒバリを捕まえようと、暴れ出しました。巨人たちは、ヒバリを取り合いました。ところが、ヒバリを捕まえる前に、くたびれてしまいました。
巨人たちがくたびれて動けなくなったすきに、仕立屋はすべての巨人の首をはねました。
仕立屋はお城に帰ると、王様に巨人を退治したことを報告しました。
すると王様は、「どのようにして首をはねたのかね?」と聞きました。仕立屋は、「刀をちょっと振り回しただけですよ」と答えました。
王様はとても喜び、仕立屋に大金を与え、王女と結婚させました。仕立屋は、幸せに暮らしました」
この結末は、原作とおおむねorほぼ一致します。でも、彼はこの話を知っていたわけではありません。また、童話をたくさん読むようなタイプでもありません。それなのに、童話のスタイルを崩さずに物語を書き上げました。
他の子どもたちも、それぞれに創造力を存分に発揮して、物語を書きました。巨人と平和的に話し合って解決させたり、王様と巨人に駆け引きをさせたりと、知恵を絞っていました。そして、結末のほとんどは、幸せになるというお話でした。
この学習を通して、人生の中で困難を乗り越えていくことや、希望をもって生きることの大切さを学んでくれたことと思います。
これを機会に読書への意欲が高まってくれればと期待しています。
☆前回の算数の解答は、(n+1)(n+2)÷2となります。挑戦していただけだでしょうか?

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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